テキストサイズ

温もり

第4章 母

 シャワールームには先にニニを入れようと思っていたのだが、離れるのを恐れるように彼女が手を引いたため、二人は狭いシャワールームに一緒に居た。

「ん……」

 ニニの甘い声に零九がハッとすると、体を洗っていたはずの手が彼女の乳房を揉んでいた事に気づいた。彼女は抵抗する事も無く、体を委ね、目を閉じている。

「ニニ……」

 こんな事をするつもりなどなかった。血の繋がった兄弟を殺めた直後に最愛の妹を抱こうとしていた自分に吐き気がする。

「良いよ、零九……」

 そんな彼の心境も知らず、甘い一時で痛みを紛らわせようとするように、ニニは彼に抱きつき、全身を密着させる。そんな事をされて、零九は拒絶できるはずがなかった。彼女が自分を求めてくれる事に喜びを感じ、彼女の思いに答えようと言う使命感も出てくる。

 そして、二人はシャワーを浴びながら互いを求める。
 二つに分かれた体を一つに戻そうとする様に。心の奥まで互いで埋めようとするように。
 互いを忘れまいとするように。

「零九……!」

 悲鳴に似た声でニニは最愛の兄を呼び、求める。

「ニニ……」

 彼女に応える様に零九は呼ぶ。
 いつもならその続きに愛を囁いたのだが、それはもう言えなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ