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温もり

第4章 母

 精神的にも肉体的にも疲労困憊の体で研究所に戻ると、そこはいつもと同じ光景だった。
 遊ぶ年少LL達、彼らを世話したり、遊んだりしている年長LL達。

「あ、一五零、お帰りー」

 寝転がって本を読んでいたニ零一の一一が声をかける。
 彼女が読んでいるのは、年頃の少女らしい純愛漫画。向かい合って手を繋いでいる男女のイラストが表紙のそれは、最近アニメにもなったらしくその時間に食い入る様にテレビを見ているLLも多いのを二人は知っている。

「ただいま」

 ニニは疲れ切った声で返事をする。今は彼女の読む漫画に微塵も興味も無く、ただ、ひたすらに疲れて眠りたかった。それは彼女も解ったらしく、心配そうな視線を向けつつ、二人の邪魔にならない様に起き上がる。

「……大丈夫?」

 心配のあまりに出た言葉は、そんな物で、悲壮感すらかもし出す二人には不謹慎とすら思えるものだった。

「大丈夫、だよ」

 それでも、ニニは微かに笑って答える。周囲に必要以上に心配はかけたくないと言う、彼女の気遣いからだった。

「飲み物は要らない?」

「……じゃあ、緑茶もらえる?」

「うん」

 ニニがまだ喋る気力は残されていると見たニ零一はさっさと立ち上がって小走りでキッチンに向かう。

「零九、大丈夫?」

 無言なのはいつも通りなのだが、彼も疲れきっていると知っているので声をかける。

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