
温もり
第5章 地獄
男はニヤニヤと笑い、零九を見下ろす。
男は零九に危害しか加える気はない。だが、零九にできる事はそれが終わるのをただ祈るだけ。何故なら、自分が抵抗すればニニが身代わりになるだけだと彼は解っていたからだ。
「ふふっ、ねぇ、まず何をするの?」
「お前は本当に酷い母親だな? いつもと違ってこいつはそこそこ可愛がってたんだろ?」
ラディは零九に目を向けるが、そこには母親や女、人と思える物が一つも無かった。反射的に今すぐ殺して欲しいと哀願してしまいそうになるほどの嗜虐を、その瞳に宿していた。
「ええ、可愛いわよ。可愛過ぎて抱かせてあげたくらいよ」
憎しみすら宿さなくなったほどに弱まった零九を見てラディは微笑む。
「何だ? こいつ自分の親とやってんのか?」
男は理解出来ない、と言った顔で零九を蔑み、ラディは男の耳元でそっと囁く。
「でもね、一番好きなのは妹よ。ちょっと目を離した好きにセッセとしてる位」
「はぁ!? マジかよ。妹ってあの女だろ? あれが好きだってか!?」
ニニを罵られ、零九は怒りを瞳に宿し、ゆらりと立ち上がる。それだけは許せるものではなかった。
「なんだ? やるってのか?」
檻の外にいる男は数歩下がり、零九からは決して届かない位置に立つ。それでも彼は男に近づき、檻の中から男を睨んだ。
「俺の事は良い。ニニの事は侮辱ーー」
言っている途中でラディの蹴りが腹部に入り、零九は腹を押さえてうずくまる。女に出せる力ではなく、まるで鉄球がめり込むような衝撃があった。
男は零九に危害しか加える気はない。だが、零九にできる事はそれが終わるのをただ祈るだけ。何故なら、自分が抵抗すればニニが身代わりになるだけだと彼は解っていたからだ。
「ふふっ、ねぇ、まず何をするの?」
「お前は本当に酷い母親だな? いつもと違ってこいつはそこそこ可愛がってたんだろ?」
ラディは零九に目を向けるが、そこには母親や女、人と思える物が一つも無かった。反射的に今すぐ殺して欲しいと哀願してしまいそうになるほどの嗜虐を、その瞳に宿していた。
「ええ、可愛いわよ。可愛過ぎて抱かせてあげたくらいよ」
憎しみすら宿さなくなったほどに弱まった零九を見てラディは微笑む。
「何だ? こいつ自分の親とやってんのか?」
男は理解出来ない、と言った顔で零九を蔑み、ラディは男の耳元でそっと囁く。
「でもね、一番好きなのは妹よ。ちょっと目を離した好きにセッセとしてる位」
「はぁ!? マジかよ。妹ってあの女だろ? あれが好きだってか!?」
ニニを罵られ、零九は怒りを瞳に宿し、ゆらりと立ち上がる。それだけは許せるものではなかった。
「なんだ? やるってのか?」
檻の外にいる男は数歩下がり、零九からは決して届かない位置に立つ。それでも彼は男に近づき、檻の中から男を睨んだ。
「俺の事は良い。ニニの事は侮辱ーー」
言っている途中でラディの蹴りが腹部に入り、零九は腹を押さえてうずくまる。女に出せる力ではなく、まるで鉄球がめり込むような衝撃があった。
