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温もり

第1章 嗚咽

 零九は手を伸ばし、何をして欲しいのか理解したニニは彼の手を握る。
 暖かい彼女の体温に、心が少し軽くなる。繋いだ手から彼女の想いが伝わって来る様で、零九は安心出来る。

「零九?」

「大丈夫だよ。俺はまだ大丈夫」

 零九は心配そうなニニを見上げて、安心させようと強く手を握る。

でも、次に死ぬのは俺なんだ。ニニ、君は一人にさせないよ。俺が死んだ後、ラディに何をされるのか解ってるから。

 零九は決して口に出さず、それでもその想いが少しでも伝わる様に願った。

「零九? 寝ちゃった?」

 握った手から力が抜け、目を開けない彼に気づき、ニニは顔を覗き込む。スースーと寝息を立て、彼はすっかり眠っていた。
 何をしていたのか聞きたかったが、これでは聞けない。ラディに何かされてないか、それが彼女には一番気がかりだった。
 自分に何が出来るかと言われも、ラディを前に何も出来ない事は解っている。

 今ニニに出来るのは、力の抜けた零九の手を離し、頬にそっとキスするだけ。

「おやすみ」

 そう呟いてそっと部屋を出て行く。食事の時間が近づいていたので、それを二人分貰いに向かった。

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