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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第1章 恐怖体験の始まりは、さらし首から!?

 それにしても、よくできた町だ。私、京都の映画村にいったことがあるけど、ああいう感じで、このお化け屋敷の中に作られた町だって判っているのに、まるでタイムスリップして江戸時代に紛れ込んだようだよ。
 それにしては、私たち以外のお客やスタッフらしい人を見かけないのは不思議。
 私と高志は並んで人通りのない廃墟のような江戸の町を歩いていく。
 さらし首は十分不気味だったけど、そろそろ何か仕掛けか゜出てきて良い頃合いだと思うのに、それも出てこないのも妙だなと思い始めた時、隣の高志が思わずつぶやいてた。
「う、うわあ、すげえ美人」
 その声に、私ははじかれたように顔を上げた。うっとりと魂を抜かれたように見つめている高志の視線の先には、何と遊廓があった。
 私たちはいつしか、色町―江戸時代でいえば吉原ーに迷い込んでいたらしい。
 朱塗りの格子窓が艶めかしい遊女屋が幾つも軒を連ねている。まるで、本物の吉原遊廓に迷い込んだようで、私は思わず、ゴクリと息を呑んだ。

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