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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第2章 色っぽい花魁の次は身も凍る夜泣きそば屋

 私は隣の高志を呆れて見つめた。
 こりゃ、駄目だ。高志はもう完全に心を持っていかれてしまっている。
「なあ、なあ、あれが花魁だろ? ほら、遊女の中でも最も位が高い太夫とかいう」
 へえー、歴史は嫌いだと常々宣言してはばからないアンタがそんなことを知ってるとはねえ。
 私は少し意地悪い気持ちで、高志を睨めつけてやった。
 私の心中なんて知らずらに、高志は紅格子の向こうの花魁を相変わらず、うっとりと見つめている。
 今も昔も、男の助平心は変わらないんだうね。何百年も前の本当の江戸の町でも、男たちは夜ごと、今の高志のように美しい花魁をよだれを垂らして眺めていたんだろう。
 何だか考えていると腹が立ってきて、私は紅格子の向こうをのぞき込むふりをして、高志の脚を蹴飛ばしてやった。
「い、痛ぇ」
 いささか大げさなほどに脚を押さえて騒ぐ高志に、殊勝に頭を下げる。
 

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