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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第2章 色っぽい花魁の次は身も凍る夜泣きそば屋

「何だよ、相手は人形なんだから、構わないだろ」
 高志の鼻の下は完全に伸びている。私は無性に腹が立った。
「たとえ人形でも、無断で身体に触るなんてもセクハラよ、セクハラ」
 と、高志が急に嬉しげに叫んだ。
「もしかして、真美はあの人形に妬いてるのか?」
 ヘッ、何がとうしたら、そうなるの? 何で、私があの花魁人形に焼きもちやかなきゃならないわけ?
 こいつの思考回路はつくづく判らない。私はもう何も言う気力がなくなってしまう。私が黙っているのを良いことに、高志は好き放題言ってくれる。
「真美もいちど、こんな恰好してみたら? ふだんは色気のカケラもない真美でも、少しは色っぽくなるかもしれないぞ? で、花魁の恰好をしたお前を俺がこう―」
 と、またしても嫌らしい仕草で花魁の身体に手を伸ばそうとするので、私はついにキレた。思いきり、高志の背中をつねった。
「ここは遊女屋だから、お触りにもお金がかかるんですって。このどスケベ野郎」
「痛いじゃないか~」
 恨めしげに背中を押さえる高志を放っといて、私はさっさと遊廓を後にした。  

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