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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第2章 色っぽい花魁の次は身も凍る夜泣きそば屋

「あら、何のこと? 今のは花魁がいやがったんじゃない?」
 と、素知らぬ顔でうそぶいておく。
「馬鹿いうなよ、あれは人形だろ」
 高志は不満げに口をとがらせて、慌てて私の後を追いかけてきた。
 何よ、ちょっと美人と見るや、だらしなく相好を崩しちゃってさ。そりゃあ、私はあんな花魁みたいに艶っぽくも美しくもありませんよ。あんたのようなイケメンの隣に立つのにふさわしいのは、あんな美女でしょ。
 考えれば考えるほど、いらいらしてくる。でも、これって、高志が言っていたように、まるで、私があの花魁に嫉妬してるようじゃないの。
 ああ、やだ。相手は人形よ、人形。いや、そういう話ではなくて、人形てあろうと生身の女でろあうと、高志の夢中なっている女に、何でこの私がいらつかなきゃならないのか? ―問題は要するに、そこなのだ。
 高志が人形を愛そうが、人間女と恋に落ちようが、所詮、私に関係のない話だもの。

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