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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第3章 謎の江戸っ娘はいったい誰!?

 数えて三軒目の家の前で、一人の女の子がうずくまっていた。
 黄八丈っていうのかな、黄色に格子模様の可愛い色柄のキモノ、時代劇なんかでよく見かける若い娘さんが結ってるような髪型。
 娘さんっていうよりは、まだ女の子。恐らく、私と同じ年か少し下くらい?
 女の子は何があったのか、泣いているみたいだ。
「あの―、どうかしたの?」
 私は思いきって訊ねてみた。
 泣いている女の子を見ないふりして通り過ぎるなんて、私の性格じゃ無理だよ。
 でも、高志は慌てて私に囁いた。
「真美、止せよ。声をかけたら、のっぺらぼうだったーなんてことになったら、大変だぞ」
 本当に、コイツは男のくせに度量の小さいヤツだ。もし、このコがのっぺらぽうだったとしても、それはあの夜泣き蕎麦のおじいさんと同じで、誰かが特殊メークで変身してるだけだろうっつうの。
「ね? 何が哀しいの」
 私が幾ら訊ねても、女の子は両手で顔を覆い、しくしくとすすり泣くだけだ。 

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