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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第3章 謎の江戸っ娘はいったい誰!?

 おつやちゃんは一人娘で、両親に溺愛されて育ったという。四つ年上のその許婚者とは近々、祝言を挙げる予定で、彼が婿として、おつやちゃんの家にやってくることになっていた。
 つまり、おつやちゃんは愛する人との結婚式を目前にして、儚く亡くなってしまったというわけだ。
 そりゃあ、未練も残るよね。
 ―というより、何だか可哀想すぎる話だ。
 相手の許婚者の青年は、無事に逃げおおせた。後年、別の女性と結婚して天寿をまっとうしたらしいと、これもスタッフのおじさんが教えてくれたの。
 おつやちゃん、もしかしたら、今もその大好きだった男を捜して、この世をさまよい歩いているのかも。
 二人で逃げる最中、恋人とつないだ手がはなれてしまったばかりに、おつやちゃんはあたら若い生命を散らしてしまったんだね。
 やっぱり、大切なひとと繋いだ手はどんなことがあっても、放しちゃいけないんだよ。
 そのことを私は何となく、何百年も前に死んだおつやちゃんに教えられたような気がしてならなかった。

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