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ブルースカイ

第5章 美香

返事はなかった。



「あれ?微かに鉄臭い匂いしとうけど、心当たりは?」



「えっ?どういう意味なん?」



「鼻血出したとか、怪我してて血が出てるとか、そんなんや。」



「あるわけないやん、そんなん。」



俺は念のため、鼻の下をハンカチで拭いた。



もちろん血はでてなかった。



となると、風呂場から・・・。



・・・最悪だ。最悪の結果を招いてしまった。



昨日、最期に話したのは俺なのに、なんで気付けなかったのか。



諦めるのはまだ早い。最後にほのかな希望を持って、風呂場のドアを開けた。



カチャッ



開けた途端にムッとするような鉄の匂い。いや、血の匂いだ。ほのかな希望は全て打ち砕かれ、目の前に広がる現実は、俺に絶望と、激しい後悔を与えるのに十分だった。



赤黒く染まった浴槽に、ロウ人形のような美香。

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