
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第8章 第二話・其の四
「そうか」
唐突に、俊昭の口から短い呟きが落ちた。
「では、最後に私からもお返しだ」
突如、俊昭が拳を繰り出し、その一撃はまともに孝俊の額に当たった。
「これでおあいこだな」
殴られた孝俊は、かえって嬉しげに顔を綻ばせた。
「ああ」
俊昭も破顔して頷く。その顔は憑きものが落ちたように晴れやかで、これまで纏いついていた翳りのようなものはもう微塵も残ってはいなかった。
孝俊がスと右手を差し出す。
その手をまた俊昭もしっかと握り返した。―実に十年ぶりの、心から打ち解けての邂逅であった。
「だが、俊昭。これだけは申しておくぞ。もう二度と俺の女に手を出すな」
孝俊が言うと、俊昭は揶揄するように言う。
「孝太郎どのは意外にやるな。お前がそんな気骨のある奴だとは知らなかった。見直しだぞ」
「そいつは賞めて貰えて光栄だ」
孝俊もまた冗談のように返す。
その後、俊昭がふと思い出してもしたかのように言った。
「大切にしてやれよ。もう二度と泣かせるな。今度、美空どのが泣いているのを見つけたら、そのときは有無を言わさず連れて帰るからな。お前には勿体ないほどの良い女ではないか」
「申したな、相変わらず口の減らぬ奴だ。そなたの方こそ、早く身を固めて叔父上を安心させてやれ」
孝太郎の言葉に、俊昭は肩をすくめた。
「お前に言われたくはないわ」
二人は互いに顔を見合わせ、声を上げて笑った。秋の庭に孝俊と俊昭の笑い声が響き渡る。
美空は涙ぐんで、そんな二人を見つめていた。
唐突に、俊昭の口から短い呟きが落ちた。
「では、最後に私からもお返しだ」
突如、俊昭が拳を繰り出し、その一撃はまともに孝俊の額に当たった。
「これでおあいこだな」
殴られた孝俊は、かえって嬉しげに顔を綻ばせた。
「ああ」
俊昭も破顔して頷く。その顔は憑きものが落ちたように晴れやかで、これまで纏いついていた翳りのようなものはもう微塵も残ってはいなかった。
孝俊がスと右手を差し出す。
その手をまた俊昭もしっかと握り返した。―実に十年ぶりの、心から打ち解けての邂逅であった。
「だが、俊昭。これだけは申しておくぞ。もう二度と俺の女に手を出すな」
孝俊が言うと、俊昭は揶揄するように言う。
「孝太郎どのは意外にやるな。お前がそんな気骨のある奴だとは知らなかった。見直しだぞ」
「そいつは賞めて貰えて光栄だ」
孝俊もまた冗談のように返す。
その後、俊昭がふと思い出してもしたかのように言った。
「大切にしてやれよ。もう二度と泣かせるな。今度、美空どのが泣いているのを見つけたら、そのときは有無を言わさず連れて帰るからな。お前には勿体ないほどの良い女ではないか」
「申したな、相変わらず口の減らぬ奴だ。そなたの方こそ、早く身を固めて叔父上を安心させてやれ」
孝太郎の言葉に、俊昭は肩をすくめた。
「お前に言われたくはないわ」
二人は互いに顔を見合わせ、声を上げて笑った。秋の庭に孝俊と俊昭の笑い声が響き渡る。
美空は涙ぐんで、そんな二人を見つめていた。
