
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第8章 第二話・其の四
「はい、昨日、侍医の前田春栄どのにも診て頂きましたゆえ、間違いはございませぬ」
刹那、孝俊の口許が綻んだ。。
「そうか、でかしたぞ、美空」
次の瞬間、美空の身体が突然、抱え上げられた。
「でかした、でかした、ようやった」
美空を抱いて、くるくると回る孝俊のはしゃぎようは、それこそ、子どものようだ。
だが、孝俊の歓びもまた無理からぬことであった。彼は彼なりに、美空への風当たりが強いことを気にしてはいたのだ。藩主である孝俊が美空を庇えば庇うほど、〝また、殿のご寵愛を笠に着て〟と、余計にその逆風は強くなる。ゆえに、孝俊は、自然にその逆風が静まり、やがて順風になるのを待つしかなかったのだ。
しばらく美空を腕に抱いて部屋中を回った後、孝俊はそっと壊れ物を扱うように美空の身体を下ろした。
「元気な子を生んでくれ」
徳千代を身ごもったときと同じ言葉をくれる良人に、美空は恐る恐る訊ねる。
「殿はやはり若君をお望みにございますか」
と、孝俊の顔に優しい笑みがひろがった。
「姫でも若でも良い、健やかであれば、それだけで十分だ」
「はい」
美空は微笑んで頷く。
ふと庭に視線を投げると、烏瓜が夕陽の色を受けてつややかに輝いていた。
刹那、孝俊の口許が綻んだ。。
「そうか、でかしたぞ、美空」
次の瞬間、美空の身体が突然、抱え上げられた。
「でかした、でかした、ようやった」
美空を抱いて、くるくると回る孝俊のはしゃぎようは、それこそ、子どものようだ。
だが、孝俊の歓びもまた無理からぬことであった。彼は彼なりに、美空への風当たりが強いことを気にしてはいたのだ。藩主である孝俊が美空を庇えば庇うほど、〝また、殿のご寵愛を笠に着て〟と、余計にその逆風は強くなる。ゆえに、孝俊は、自然にその逆風が静まり、やがて順風になるのを待つしかなかったのだ。
しばらく美空を腕に抱いて部屋中を回った後、孝俊はそっと壊れ物を扱うように美空の身体を下ろした。
「元気な子を生んでくれ」
徳千代を身ごもったときと同じ言葉をくれる良人に、美空は恐る恐る訊ねる。
「殿はやはり若君をお望みにございますか」
と、孝俊の顔に優しい笑みがひろがった。
「姫でも若でも良い、健やかであれば、それだけで十分だ」
「はい」
美空は微笑んで頷く。
ふと庭に視線を投げると、烏瓜が夕陽の色を受けてつややかに輝いていた。
