
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第10章 第三話・其の弐
「違います。孝俊さま、これだけは信じて下さいませ。私は先刻も申したとおり、誰に恥じることも致してはおりません。誠志郎さんとの間には本当に何もないのです」
たとえ、心の内はどうあれ、現実として誠志郎との間には周囲から勘繰られるようなことは何一つない、清らかな関係なのだ。それを、あれこれと下品な憶測をされるのは辛かった。
「誠志郎さんときたか。―どうやら、俺が考えている以上に、そなたと浪速屋は随分と親しいようだな」
吐き捨てるように言われ、美空はついカッとなった。
「誠志郎さんは、そのような方ではありません。男気のある、分別を備えた方です。仕事を紹介して下さったからといって、それを武器にするような、そんな卑怯なことはなさいません」
我が身一人のことなら、まだ我慢もできた。しかし、優しい誠志郎まで貶め、侮蔑されるのはたまらなかった。
「そなたは俺の前で、そこまで浪速屋を庇うのか? 浪速屋が男気のある、分別を備えた男だと堂々と言い切るというのか!?」
「お願いでございます。どうか、どうか、お信じ下さいませ。私の身の潔白は神仏に誓って間違いございませぬ!」
美空が懸命な面持ちで訴える。
美空の必死な表情に気付くゆとりさえなく、孝俊はただ眼もくらむような怒りに襲われた。
―俺はこの女に騙されたのだ!! 生涯に一度、初めて心から愛し、この女しか要らぬとまで欲した女に。
燃えるような光を湛えていた眼をそっと伏せ、孝俊はひと言ポツリと呟く。
「そなたは、俺をこれ以上ないというほど残酷なやり方で裏切ったのだな」
―そなたが俺を切り捨てるというのなら、俺は鬼になる。とことん鬼になって、お前と煉獄に落ち、共に業火に灼かれてやる。
この時、孝俊の中でプツリと何かが切れた。
孝俊は瞑っていた眼をゆっくりと開いた。
「そなたを江戸に連れて帰る」
たとえ、心の内はどうあれ、現実として誠志郎との間には周囲から勘繰られるようなことは何一つない、清らかな関係なのだ。それを、あれこれと下品な憶測をされるのは辛かった。
「誠志郎さんときたか。―どうやら、俺が考えている以上に、そなたと浪速屋は随分と親しいようだな」
吐き捨てるように言われ、美空はついカッとなった。
「誠志郎さんは、そのような方ではありません。男気のある、分別を備えた方です。仕事を紹介して下さったからといって、それを武器にするような、そんな卑怯なことはなさいません」
我が身一人のことなら、まだ我慢もできた。しかし、優しい誠志郎まで貶め、侮蔑されるのはたまらなかった。
「そなたは俺の前で、そこまで浪速屋を庇うのか? 浪速屋が男気のある、分別を備えた男だと堂々と言い切るというのか!?」
「お願いでございます。どうか、どうか、お信じ下さいませ。私の身の潔白は神仏に誓って間違いございませぬ!」
美空が懸命な面持ちで訴える。
美空の必死な表情に気付くゆとりさえなく、孝俊はただ眼もくらむような怒りに襲われた。
―俺はこの女に騙されたのだ!! 生涯に一度、初めて心から愛し、この女しか要らぬとまで欲した女に。
燃えるような光を湛えていた眼をそっと伏せ、孝俊はひと言ポツリと呟く。
「そなたは、俺をこれ以上ないというほど残酷なやり方で裏切ったのだな」
―そなたが俺を切り捨てるというのなら、俺は鬼になる。とことん鬼になって、お前と煉獄に落ち、共に業火に灼かれてやる。
この時、孝俊の中でプツリと何かが切れた。
孝俊は瞑っていた眼をゆっくりと開いた。
「そなたを江戸に連れて帰る」
