
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第11章 第三話〝花笑み~はなえみ~〟・其の参
最後に見た誠志郎の顔がふっと甦った。
―美空ちゃん、今度、私がこの村に来たときは。
確か、誠志郎は別れ際にそう言った。
あの日、彼は何を言おうとしていたのだろう。今となっては、もう応えを知る術はない。―いや、良いんだ。この話は、私が今度ここに来たときで良い。そのときにちゃんと話すよ。
美空が訊ねても、誠志郎はいつもどおりの優しい笑顔を浮かべて首を振るだけだった―。
誠志郎は一体、何を伝え、美空にどんな話をしたかったのか。
幾らその話を知りたいと渇望しても、永遠に謎のままだ。
美空の眼に涙が溢れた。閨で涙を見せると、孝俊はたちどころに不機嫌になる。そのため、泣くことはできない。
美空は眼裏で涙を乾かし、泣くまいと懸命に我慢した。
太股を愛撫していた手が徐々に上に移動し、秘められた狭間の奥に触れようとしたその時、美空が大きく身を捩った。
「いやっ、誠志郎さん―」
突如として身を起こし逃れようとした妻を、孝俊は憮然とした表情で見た。
「他の男の名など呼ぶな」
「―」
美空は蒼褪めた。
孝俊と過ごす寝所で、誠志郎の名を呼ぶとは、何という失態だろう。それでなくとも、孝俊は、美空と誠志郎の仲を疑っていたというのに。
孝俊の眉間の皺が深くなっている。
「呆れた女だ。良人と膚を合わせている最中に、情人(いろ)の名を呼ぶとは」
孝俊は険しい表情で呟くと、美空の手を掴み、グイと強い力で引き寄せた。
途端に、美空の身体を烈しい嫌悪が走った。
「いやっ、いや! 誠志郎さん、助けてっ」
苛立った孝俊が美空を背後から抱きすくめる。それでもなお烈しく抵抗する美空を孝俊は乱暴に褥に押し倒し、素早く上から覆い被さった。
―美空ちゃん、今度、私がこの村に来たときは。
確か、誠志郎は別れ際にそう言った。
あの日、彼は何を言おうとしていたのだろう。今となっては、もう応えを知る術はない。―いや、良いんだ。この話は、私が今度ここに来たときで良い。そのときにちゃんと話すよ。
美空が訊ねても、誠志郎はいつもどおりの優しい笑顔を浮かべて首を振るだけだった―。
誠志郎は一体、何を伝え、美空にどんな話をしたかったのか。
幾らその話を知りたいと渇望しても、永遠に謎のままだ。
美空の眼に涙が溢れた。閨で涙を見せると、孝俊はたちどころに不機嫌になる。そのため、泣くことはできない。
美空は眼裏で涙を乾かし、泣くまいと懸命に我慢した。
太股を愛撫していた手が徐々に上に移動し、秘められた狭間の奥に触れようとしたその時、美空が大きく身を捩った。
「いやっ、誠志郎さん―」
突如として身を起こし逃れようとした妻を、孝俊は憮然とした表情で見た。
「他の男の名など呼ぶな」
「―」
美空は蒼褪めた。
孝俊と過ごす寝所で、誠志郎の名を呼ぶとは、何という失態だろう。それでなくとも、孝俊は、美空と誠志郎の仲を疑っていたというのに。
孝俊の眉間の皺が深くなっている。
「呆れた女だ。良人と膚を合わせている最中に、情人(いろ)の名を呼ぶとは」
孝俊は険しい表情で呟くと、美空の手を掴み、グイと強い力で引き寄せた。
途端に、美空の身体を烈しい嫌悪が走った。
「いやっ、いや! 誠志郎さん、助けてっ」
苛立った孝俊が美空を背後から抱きすくめる。それでもなお烈しく抵抗する美空を孝俊は乱暴に褥に押し倒し、素早く上から覆い被さった。
