
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第11章 第三話〝花笑み~はなえみ~〟・其の参
その日を境に、孝俊の美空への寵愛は狂おしいほどのものになった。
夜毎共にする褥で、孝俊は暴君となり、美空の身体を思う存分に蹂躙する。哀しいことばかりの日々の中、二人の子らと共に過ごす時間だけが唯一の慰めであった。
美空のおらぬ間、徳千代と孝次郞は幼いなりに母の不在を受け止め、淋しさに耐えていたという。半年ぶりに再会した時、徳千代は美空にしがみついて泣きじゃくり、離れようとしなかった。
孝俊に抱かれることに烈しい抵抗を憶えるものの、徳千代の笑顔を見るつけ、美空は戻ってきて良かったとしみじみと思うのだった。
後から振り返ってみれば、村を訪れた日、孝俊が口にした言葉は、すべて巧妙な罠だったのだと思えなくもない。
孝俊は徳千代を廃嫡して出家させるといえば、美空が戻ってくることを想定していたに違いない。子可愛さに、美空が自我を抑え、孝俊と共に江戸に帰るだろうことを容易に想像し得たからこそ、あのような酷いことを平然と口にしたのだろう。
自分が孝俊を愛しているかどうかさえ、美空にはもう判らない。いや、最早、そのようなことはどうでも良いとさえ思うようになった。
空しい、何もかもが空しくてならなかった。
自分が何のために生きているのか、生きている目的さえ見い出せない
今度の一件で、美空は孝俊のこれまで知らなかった一面をまざまざと思い知ることになった。
己れの目的―報復を遂げるためには、手段を選ばない、自分を裏切った相手には徹底的にまでに酷薄になれる男だったのだ。
庭先に咲く梅の花が満開になったある日、美空の部屋は珍しく子どもの歓声が響き渡っていた。
明けて四つになった徳千代が一歳違いの弟孝次郞と遊び戯れているのであった。孝次郞と徳千代の性格は兄弟ながら、実に対照的だ。悪戯好きで、腰元たちの袂に小さな蛙やイモリをそっと忍ばせては悲鳴を上げさせて歓んでいる徳千代、部屋の中で静かに遊ぶのが好きな孝次郞。
夜毎共にする褥で、孝俊は暴君となり、美空の身体を思う存分に蹂躙する。哀しいことばかりの日々の中、二人の子らと共に過ごす時間だけが唯一の慰めであった。
美空のおらぬ間、徳千代と孝次郞は幼いなりに母の不在を受け止め、淋しさに耐えていたという。半年ぶりに再会した時、徳千代は美空にしがみついて泣きじゃくり、離れようとしなかった。
孝俊に抱かれることに烈しい抵抗を憶えるものの、徳千代の笑顔を見るつけ、美空は戻ってきて良かったとしみじみと思うのだった。
後から振り返ってみれば、村を訪れた日、孝俊が口にした言葉は、すべて巧妙な罠だったのだと思えなくもない。
孝俊は徳千代を廃嫡して出家させるといえば、美空が戻ってくることを想定していたに違いない。子可愛さに、美空が自我を抑え、孝俊と共に江戸に帰るだろうことを容易に想像し得たからこそ、あのような酷いことを平然と口にしたのだろう。
自分が孝俊を愛しているかどうかさえ、美空にはもう判らない。いや、最早、そのようなことはどうでも良いとさえ思うようになった。
空しい、何もかもが空しくてならなかった。
自分が何のために生きているのか、生きている目的さえ見い出せない
今度の一件で、美空は孝俊のこれまで知らなかった一面をまざまざと思い知ることになった。
己れの目的―報復を遂げるためには、手段を選ばない、自分を裏切った相手には徹底的にまでに酷薄になれる男だったのだ。
庭先に咲く梅の花が満開になったある日、美空の部屋は珍しく子どもの歓声が響き渡っていた。
明けて四つになった徳千代が一歳違いの弟孝次郞と遊び戯れているのであった。孝次郞と徳千代の性格は兄弟ながら、実に対照的だ。悪戯好きで、腰元たちの袂に小さな蛙やイモリをそっと忍ばせては悲鳴を上げさせて歓んでいる徳千代、部屋の中で静かに遊ぶのが好きな孝次郞。
