
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第12章 第四話・其の壱
「永瀬。そなたの人柄については、私も少しは判っておるつもりじゃ。そなたが並々ならぬ覚悟の上で、私に先ほどのようなことを申したのも理解はできる。されど、私のことは良い。私は上さまの妻、妻であれば、良人たる公方さまのご意思に添うのが務め。それに、確かに質素倹約を旨とし、少しでも幕府の財源を豊かにするのも我等の心得ねばならぬことでもある。何しろ、幕府あっての将軍、公方さまおわされてのこの大奥じゃ。今は幕府の屋台骨がいささかなりとも揺らぐことのなきよう、我等も心を一つにして事に当たらねばならぬ。そなたの言い分は聞いた。私とて同じ女子、一生奉公の覚悟で大奥勤めに励む者たちの心も満更理解できぬわけではない。さりとて、今すぐにどうしてやるということも私にはできぬ。今しばらく待って欲しい」
美空が諄々と説いてゆくと、永瀬はハッとその場に平伏した。
「今のお言葉を賜りましただけでも、心が軽うなりましてございます」
「あい判った、そなたから聞いた話は無下にはせぬ。とはいえ、何とかできると断言はできぬが、力は尽くそう」
美空の言葉に、永瀬の顔に安堵の表情が浮かぶ。
「どうぞ、何とぞ、よしなにお願い申し上げまする」
永瀬は細い眼を更に細め、うら若き御台所を見つめる。
「それにしても、御台さま。我らは、またとなきお方をこの大奥にお迎えすることが叶い、この上なき果報者にございます」
その惜しみない美空への讃辞に、智島はこれもまたすぐに頷いた。先刻までの永瀬が美空に物申していたときの表情とは一転して、上機嫌である。
要するに、この忠実無比な侍女は、美空が賞められれば、あたかも我が身が賞められたように機嫌が良いのだ。
「流石は永瀬さま、お眼が確かでいらっしゃいますね。御台さまの御事をよくお判りでいらせられます」
その言葉に、今度は当人の美空が呆れ顔にになった。
美空が諄々と説いてゆくと、永瀬はハッとその場に平伏した。
「今のお言葉を賜りましただけでも、心が軽うなりましてございます」
「あい判った、そなたから聞いた話は無下にはせぬ。とはいえ、何とかできると断言はできぬが、力は尽くそう」
美空の言葉に、永瀬の顔に安堵の表情が浮かぶ。
「どうぞ、何とぞ、よしなにお願い申し上げまする」
永瀬は細い眼を更に細め、うら若き御台所を見つめる。
「それにしても、御台さま。我らは、またとなきお方をこの大奥にお迎えすることが叶い、この上なき果報者にございます」
その惜しみない美空への讃辞に、智島はこれもまたすぐに頷いた。先刻までの永瀬が美空に物申していたときの表情とは一転して、上機嫌である。
要するに、この忠実無比な侍女は、美空が賞められれば、あたかも我が身が賞められたように機嫌が良いのだ。
「流石は永瀬さま、お眼が確かでいらっしゃいますね。御台さまの御事をよくお判りでいらせられます」
その言葉に、今度は当人の美空が呆れ顔にになった。
