
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第13章 第四話・其の弐
「あい判った。そなたほどの者がそこまで申すからには、矢代と申す御客会釈の人間に間違いはなかろう。それにしても、一体誰がいかようにして老中に訴え出たのか」
美空が思案顔になると、智島はいっそう低声(こごえ)になった。
「されば、御台さま。御年寄永瀬さま配下のお次(つぎ)が堀田さまに内々に訴え出たとか」
お次とは御客会釈の下の役職になる。大奥女中の役職は概ね細分化されていて、各々の役目もきちんと定められている。お次は御客会釈の補助のようなこともするため、矢代とそのお次は普段から関わり合うことも多かったという。
「そのお次が堀田に密告したというのは間違いはなかろうな」
美空が念を押すように問う。
智島は深く頷いた。
「永瀬さまご自身が本日、直々に私の許へお運びになり、そのように仰せになりましたゆえ、間違いはございませぬ。大変なことになったと、永瀬さまは珍しく取り乱したご様子でございました」
「しかし、何ゆえ、永瀬がわざわざそなたにそのようなことを話しに参ったのであろうか。そのお次は、永瀬配下の奥女中であると申すに。永瀬にとりて、そのお次はいわば身内も同然。その身内の者が同じ屋根の下に住まう仲間を売ったと何故、そなたに話す必要があったのか」
そう言いながらも、美空はそれでこそ永瀬の永瀬たる由縁であるとも考えていた。
「永瀬さまは、このように仰せにございました」
―何としても、矢代の身柄は、この私が救うゆえ、そなたは安堵致すが良い。
永瀬はそれからすぐに、老中の堀田筑前守誓頼に直談判に赴いたそうだ。
美空が思案顔になると、智島はいっそう低声(こごえ)になった。
「されば、御台さま。御年寄永瀬さま配下のお次(つぎ)が堀田さまに内々に訴え出たとか」
お次とは御客会釈の下の役職になる。大奥女中の役職は概ね細分化されていて、各々の役目もきちんと定められている。お次は御客会釈の補助のようなこともするため、矢代とそのお次は普段から関わり合うことも多かったという。
「そのお次が堀田に密告したというのは間違いはなかろうな」
美空が念を押すように問う。
智島は深く頷いた。
「永瀬さまご自身が本日、直々に私の許へお運びになり、そのように仰せになりましたゆえ、間違いはございませぬ。大変なことになったと、永瀬さまは珍しく取り乱したご様子でございました」
「しかし、何ゆえ、永瀬がわざわざそなたにそのようなことを話しに参ったのであろうか。そのお次は、永瀬配下の奥女中であると申すに。永瀬にとりて、そのお次はいわば身内も同然。その身内の者が同じ屋根の下に住まう仲間を売ったと何故、そなたに話す必要があったのか」
そう言いながらも、美空はそれでこそ永瀬の永瀬たる由縁であるとも考えていた。
「永瀬さまは、このように仰せにございました」
―何としても、矢代の身柄は、この私が救うゆえ、そなたは安堵致すが良い。
永瀬はそれからすぐに、老中の堀田筑前守誓頼に直談判に赴いたそうだ。
