
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第15章 第四話・其の四
―初瀨どのが堀田さまにいかほどのことを申したのかは知りません。ですが、私の罪に関しては弁明のしようもございませんし、また、する気もございませぬ。
美空は、矢代のあの言葉が引っかかっていた。
あの時、矢代は自らの罪に関してだけは真実だと、そのことを強調していた。そして、今回の事件が何者かによって仕組まれたものであろうことまで理解していたのだ。
であれば、そのからくりを考えた黒幕が当然、他にいるはずだ。恐らくは矢代を密告した初瀨をつついた―もしくは動かした誰かがいる。
そして、智島の報告を聞いて、ばらばらになっていた一枚の絵がやっと元の形に収まったような気がしていた。
瑞音にとって、初瀨を動かすのは難しくはなかったはずだ。初瀨は矢代を妬み、憎しみさえ憶えていた。ほんの少し何か毒の言葉をその耳に注ぎ込みさえすれば、初瀨は容易く言うなりになったろう。
例えば、矢代よりも初瀨の方が優秀な人材であるはずなのに、どうして矢代が先に御客会釈に昇進したのか。皆は人を見る眼がない―とか。
そして、最後にこのように付け加えたとしたら、どうだろう。
―私の伯父も初瀨どのの真面目な働きぶりはちゃんと見ているみたい。もし、矢代さまが何かの罪でこの大奥からい追放されるようなことになれば、御客会釈の役職に一つ空きができるわ。伯父も、けして悪いようにはしないはずよ。
伯父というのは、むろん堀田筑前のことだ。
堀田にしろ瑞音にしろ、この事件に直接手を下した者は誰もいない。ただ初瀨を物語を進行させる役者として利用しただけで、初瀨は堀田の思惑どおりに動き、一連の事件を引き起こすのに一役買ったわけである。
堀田は可愛がっている姪を間諜として大奥に送り込み、初瀨をほんの少しつつくだけで良かったのだ。
美空は、矢代のあの言葉が引っかかっていた。
あの時、矢代は自らの罪に関してだけは真実だと、そのことを強調していた。そして、今回の事件が何者かによって仕組まれたものであろうことまで理解していたのだ。
であれば、そのからくりを考えた黒幕が当然、他にいるはずだ。恐らくは矢代を密告した初瀨をつついた―もしくは動かした誰かがいる。
そして、智島の報告を聞いて、ばらばらになっていた一枚の絵がやっと元の形に収まったような気がしていた。
瑞音にとって、初瀨を動かすのは難しくはなかったはずだ。初瀨は矢代を妬み、憎しみさえ憶えていた。ほんの少し何か毒の言葉をその耳に注ぎ込みさえすれば、初瀨は容易く言うなりになったろう。
例えば、矢代よりも初瀨の方が優秀な人材であるはずなのに、どうして矢代が先に御客会釈に昇進したのか。皆は人を見る眼がない―とか。
そして、最後にこのように付け加えたとしたら、どうだろう。
―私の伯父も初瀨どのの真面目な働きぶりはちゃんと見ているみたい。もし、矢代さまが何かの罪でこの大奥からい追放されるようなことになれば、御客会釈の役職に一つ空きができるわ。伯父も、けして悪いようにはしないはずよ。
伯父というのは、むろん堀田筑前のことだ。
堀田にしろ瑞音にしろ、この事件に直接手を下した者は誰もいない。ただ初瀨を物語を進行させる役者として利用しただけで、初瀨は堀田の思惑どおりに動き、一連の事件を引き起こすのに一役買ったわけである。
堀田は可愛がっている姪を間諜として大奥に送り込み、初瀨をほんの少しつつくだけで良かったのだ。
