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激愛~たとえ実らない恋だとしても~

第15章 第四話・其の四

 元々、彼女たちの大半は一生奉公というよりは、我が美しさを武器に将軍に見初められ、あわよくばお手が付いてお腹さまに―という極めて世俗的な野心を持って奉公に上がった者たちばかりだ。実家も手広く商いをしている大店であったり、それなりの禄を賜る武家だったりする。
 この日を限りに、大奥では若く美しい娘が一度に姿を消した。彼女たちは各々、永のお暇を賜って実家に戻り、ほどなく、それぞれが良縁を得て嫁いでいった。何しろ、大奥の御中﨟であった―しかも、若く美しいと上さまおん自らに認められた者たちばかりなのだから、嫁の望み手もあまたであった。もっとも、幾ら上さまにその容色を認められても、大奥をお払い箱になってしまったのでは意味はなかったが。
 しかし、彼女たちは将軍家俊が望んだとおり、嫁ぎ家庭を持ち、女の幸せを手に入れることはできたのである。
 この人員削減策により、幕府の公庫から大奥に流れる懸かり(費用)が大幅に減ったとされ、そのことは幕府の財政を建て直すことにも大いに役立ったと云われる。

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