
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第3章 其の参
気をつけてやらなかったのは自分の方なのだ、強引にでも医者に連れてゆけば、このようなことにまではならなかったものを―と己れの至らなさを自覚しながらも、孝太郎はつい咎めるような口調になってしまう。
「お前が倒れたと源さんから聞いて、俺がどれだけ心配したか―、全っく生きた心地もしなかったよ」
「ごめんなさい―」
美空の眼に涙が溢れる。
こんなところをお民に見られたら、孝太郎は殺されかねないだろう。
―病人を泣かせちまって、どういうつもりなんだよ、
と。
孝太郎は慌てて首を振る。
「いや、そうじゃない。別にお前を責めてるわけじゃねえんだ。俺も悪かった。お前の具合が良くねえのを知っていながら、医者にも連れてゆかず放っぽり出してたんだからな」
孝太郎はふっと口をつぐみ、それから満面の笑みを浮かべた。
「お前、身ごもってるそうだぜ」
が、孝太郎とは裏腹に、美空の白い顔からは微かに浮かんだ笑みが消えた。
その反応に、良人は不審を持ったようだ。探るような眼で美空を窺っている。
「お前、嬉しくないのか、俺たちの子どもが生まれるんだぞ?」
その言葉に、美空は唇を噛みしめた。
「本当にごめんなさい」
謝ることしかできなかった。
家族を、しがらみを持つことを嫌う孝太郎にまた、新しいしがらみ、背負うべきものを図らずも押しつけてしまったことになるのだから。
「何で、お前が謝るんだ?」
案の定、孝太郎は眉をひそめている。
やはり、美空の懐妊は孝太郎にとっては嬉しくないことなのだろうか。
そう思うと、絶望的な想いに眼の前が暗くなる。
「身ごもってることに気付かなかったことを気にしてるのか」
どうやら、孝太郎には美空の気持ちは理解できないらしい。
美空は哀しい気持ちになりながら、消え入るような声で応えた。
「だって、孝太郎さんは子どもができたら困るんじゃないの?」
す、と、孝太郎が息を呑む気配が伝わってくる。わずかな沈黙の後、孝太郎のやや低い声が返ってきた。
「お前が倒れたと源さんから聞いて、俺がどれだけ心配したか―、全っく生きた心地もしなかったよ」
「ごめんなさい―」
美空の眼に涙が溢れる。
こんなところをお民に見られたら、孝太郎は殺されかねないだろう。
―病人を泣かせちまって、どういうつもりなんだよ、
と。
孝太郎は慌てて首を振る。
「いや、そうじゃない。別にお前を責めてるわけじゃねえんだ。俺も悪かった。お前の具合が良くねえのを知っていながら、医者にも連れてゆかず放っぽり出してたんだからな」
孝太郎はふっと口をつぐみ、それから満面の笑みを浮かべた。
「お前、身ごもってるそうだぜ」
が、孝太郎とは裏腹に、美空の白い顔からは微かに浮かんだ笑みが消えた。
その反応に、良人は不審を持ったようだ。探るような眼で美空を窺っている。
「お前、嬉しくないのか、俺たちの子どもが生まれるんだぞ?」
その言葉に、美空は唇を噛みしめた。
「本当にごめんなさい」
謝ることしかできなかった。
家族を、しがらみを持つことを嫌う孝太郎にまた、新しいしがらみ、背負うべきものを図らずも押しつけてしまったことになるのだから。
「何で、お前が謝るんだ?」
案の定、孝太郎は眉をひそめている。
やはり、美空の懐妊は孝太郎にとっては嬉しくないことなのだろうか。
そう思うと、絶望的な想いに眼の前が暗くなる。
「身ごもってることに気付かなかったことを気にしてるのか」
どうやら、孝太郎には美空の気持ちは理解できないらしい。
美空は哀しい気持ちになりながら、消え入るような声で応えた。
「だって、孝太郎さんは子どもができたら困るんじゃないの?」
す、と、孝太郎が息を呑む気配が伝わってくる。わずかな沈黙の後、孝太郎のやや低い声が返ってきた。
