
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第6章 第二話・其の弐
「何と申し上げても宥松院さまはご実子の隆幸さまを亡くされ、お淋しいお身の上であらせられます。ここで新しきご簾中さまとして実の血の繋がりし姪御さまをお迎えになられ、その姫君さまを仲立ちとして長年の確執があった殿とのも仲直りなされたいと思し召しであったのでは?」
「ですから、私、宥松院さまのご落胆とお怒りも判るような気は致します」
「それにしても、そのようなことまでよくご存じですのね」
金属質な声が特徴的な娘が得意げげに言った。
「私が親しくしているお葉どのは宥松院さま付きなので、そういった話はよく伝わってくるのですよ」
「それゆえ、宥松院さまが余計にご簾中さまを眼の仇になされるのですね」
「いえ、宥松院さまだけではなく、私だって、ご簾中さまには心よりお仕える気にはなれませぬ。どこの馬の骨とも知れず、本当にどこで何をしていたか皆目判らないような女なのですもの。それに、既に懐妊していたという事実を見ても、けして身持ちの良からぬふしだらな女であったことが判りますでしょう? だから、徳千代君が真に殿のお子がどうかと宥松院さまがお疑いなのも判るように思うのです」
「では、もしや、ご簾中さまがこの上屋敷に迎えられたくて、他の男の子を殿の御子と偽っていると―」
「真偽のほどは判りませぬ。さりとて、全くあり得ぬ話というわけでもないのではと私、考えております」
「まあ、怖ろしい。これだから、町家の者は」
甲高い声の娘が興奮気味に語る。
「何せよ、ご簾中さまよりは、このお屋敷にお仕えするはした女(下女)の方がよほど身許が確かなのですからね」
「もっともですわね。されど、くれぐれもご用心なされませ。ここはご簾中さまのお部屋も近うございます。万が一、このようなことが殿のお耳に入ったら、きついお叱りを受けるは必定」
たしなめるように言う声。
「ですから、私、宥松院さまのご落胆とお怒りも判るような気は致します」
「それにしても、そのようなことまでよくご存じですのね」
金属質な声が特徴的な娘が得意げげに言った。
「私が親しくしているお葉どのは宥松院さま付きなので、そういった話はよく伝わってくるのですよ」
「それゆえ、宥松院さまが余計にご簾中さまを眼の仇になされるのですね」
「いえ、宥松院さまだけではなく、私だって、ご簾中さまには心よりお仕える気にはなれませぬ。どこの馬の骨とも知れず、本当にどこで何をしていたか皆目判らないような女なのですもの。それに、既に懐妊していたという事実を見ても、けして身持ちの良からぬふしだらな女であったことが判りますでしょう? だから、徳千代君が真に殿のお子がどうかと宥松院さまがお疑いなのも判るように思うのです」
「では、もしや、ご簾中さまがこの上屋敷に迎えられたくて、他の男の子を殿の御子と偽っていると―」
「真偽のほどは判りませぬ。さりとて、全くあり得ぬ話というわけでもないのではと私、考えております」
「まあ、怖ろしい。これだから、町家の者は」
甲高い声の娘が興奮気味に語る。
「何せよ、ご簾中さまよりは、このお屋敷にお仕えするはした女(下女)の方がよほど身許が確かなのですからね」
「もっともですわね。されど、くれぐれもご用心なされませ。ここはご簾中さまのお部屋も近うございます。万が一、このようなことが殿のお耳に入ったら、きついお叱りを受けるは必定」
たしなめるように言う声。
