
異種間恋愛
第12章 獣の正体と契り
「あの、どういうこと?」
レオは私に待て、と目くばせした。私は犬にでもなったような気分だ。
レオが口を開いた。
「お前、身体のどこかに変な印がついていないか?」
「……何故知っている」
思い当たるものがあるようで、ラドゥは真っ赤な瞳を見開いた。
硬そうな直毛の髪が少し逆立った気がする。
「そうか……」
レオは男らしいごつごつした指を自分の顎にあてた。ひとりで納得したようだ。
レオが小さな声で呟いたのが辛うじて耳に入った。
「さっきから俺の質問にひとつも答えていないのはどういうつもりだ」
いよいよ苛立ってきた様子のラドゥに私は無意識に後退りをした。
それだけの変な威圧感と恐ろしさを発している。
「ああ、俺の名前は……レオだ」
「姓も名乗るのが常識だろ」
「……レオ・ガイア・シャレット」
少しの沈黙の後、レオが口にしたその名を聞いた途端森がざわめくのを止めた。
ラドゥの呼吸も止まったように見えた。
ラドゥの細い胸板が微動だにしなくなったのだ。
「はははっ」
急にラドゥが笑いだして頭が可笑しくなってしまったのかと心配になった。
レオも怪訝な顔でラドゥを見つめる。
「そうか、昨日のライオンはお前だったのか。やっと会えた」
ひとしきり笑い終えたラドゥが笑顔で言った。
レオがライオンだったことを知っていたようだ。
「レオはライオンの名前で、元の名をティオンと言うのだろ。ずっと捜していた」
「俺を?」
「ああ、俺の強敵になれそうな奴をな。敵がいなくて飽き飽きしていたとこだった」
私は唇を噛みしめた。なんて自分勝手な奴……。
「さすが次期国王。それくらいの度胸と貪欲さがあって相応しい座だろう」
レオの声は穏やかで嫌味には聞こえない。
ラドゥが笑顔のまま言った。
「城で俺を楽しませてもらおうか」
「どういう意味だ」
「俺の競争相手になれ。学問でも剣術でも俺を抜いてくれる奴がなかなかいなくてな」
フローラさんも現王子は神のようになんでも器用にこなしてしまうと言っていたっけ。
「分かった。だが、条件がふたつ」
「言ってみろ」
「まず、俺がお前より優れた器量を持っていたなら俺に政権を預けること」
レオの毅然とした態度は国王に相応しい品格を完璧に備えていて、彼こそが国王に相応しいという気がしてきた。
レオは私に待て、と目くばせした。私は犬にでもなったような気分だ。
レオが口を開いた。
「お前、身体のどこかに変な印がついていないか?」
「……何故知っている」
思い当たるものがあるようで、ラドゥは真っ赤な瞳を見開いた。
硬そうな直毛の髪が少し逆立った気がする。
「そうか……」
レオは男らしいごつごつした指を自分の顎にあてた。ひとりで納得したようだ。
レオが小さな声で呟いたのが辛うじて耳に入った。
「さっきから俺の質問にひとつも答えていないのはどういうつもりだ」
いよいよ苛立ってきた様子のラドゥに私は無意識に後退りをした。
それだけの変な威圧感と恐ろしさを発している。
「ああ、俺の名前は……レオだ」
「姓も名乗るのが常識だろ」
「……レオ・ガイア・シャレット」
少しの沈黙の後、レオが口にしたその名を聞いた途端森がざわめくのを止めた。
ラドゥの呼吸も止まったように見えた。
ラドゥの細い胸板が微動だにしなくなったのだ。
「はははっ」
急にラドゥが笑いだして頭が可笑しくなってしまったのかと心配になった。
レオも怪訝な顔でラドゥを見つめる。
「そうか、昨日のライオンはお前だったのか。やっと会えた」
ひとしきり笑い終えたラドゥが笑顔で言った。
レオがライオンだったことを知っていたようだ。
「レオはライオンの名前で、元の名をティオンと言うのだろ。ずっと捜していた」
「俺を?」
「ああ、俺の強敵になれそうな奴をな。敵がいなくて飽き飽きしていたとこだった」
私は唇を噛みしめた。なんて自分勝手な奴……。
「さすが次期国王。それくらいの度胸と貪欲さがあって相応しい座だろう」
レオの声は穏やかで嫌味には聞こえない。
ラドゥが笑顔のまま言った。
「城で俺を楽しませてもらおうか」
「どういう意味だ」
「俺の競争相手になれ。学問でも剣術でも俺を抜いてくれる奴がなかなかいなくてな」
フローラさんも現王子は神のようになんでも器用にこなしてしまうと言っていたっけ。
「分かった。だが、条件がふたつ」
「言ってみろ」
「まず、俺がお前より優れた器量を持っていたなら俺に政権を預けること」
レオの毅然とした態度は国王に相応しい品格を完璧に備えていて、彼こそが国王に相応しいという気がしてきた。
