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異種間恋愛

第13章 秘密の大きさ

「それがちょうどあの日だったんだろう」
 私の方を見ずに話すレオ。あの前の日に初めてレオにキスをして……私はすっかりそのキスでレオが人間の姿に戻ったのだと考えていたけれど、それは思い込みだったのだろうか。
 よく考えれば、そんなおとぎ話のようなことがあるはずない。絵本に影響されすぎている自分がまた恥ずかしくなってしまった。
「どうした?」
 ラドゥが俯く私に声をかけた。いつもの意地の悪い声ではなかった。
「ううん。なにも」
 私は立ち上がった。
「お腹いっぱいになっちゃった。もう部屋に戻るね」
「リア」
 レオが意味ありげな視線をこちらに送ったが、その真意は全く分からない。とりあえず曖昧に頷いて無駄に長いテーブルから離れた。
「顔色が悪いぞ。部屋まで付いて行ってやる」
 ラドゥがいつの間にか食堂の扉の方へ早足で向かっていた。皺ひとつない白のシャツの裾が微かに揺れている。
「大丈夫よ……ほん」
「本当に、か? 大丈夫そうには見えない。送ってやると言っている。従え」
 ラドゥに先を言われてしまった私は出かけた言葉を呑み込んだ。レオにもそんなことを言われた。ふたりは似ているのかもしれない。
「何故強がる? 女ならもっと弱弱しく見せていればいい」
 ただ、ラドゥの物言いと考え方はレオと比べ物にならないほどひねくれている。レオはレオでストレートすぎるのが問題だが。
 私は首をひねってレオを見た。
 レオは何も言わず、ただ目の前の皿と自分で握りしめたフォークを見つめていた。
 どうして、何も言わないの?
「ほら、行くぞ。ティオン、お前はゆっくりしていろ」
「……ああ」
 え?
 私は望んでいた返事とは程遠いレオの言葉。急にどうしたというのだろう。
 もしかして、愛想をつかされた? 飽きられた? 
「顔が真っ青だぞ?」

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