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異種間恋愛

第15章 暴かれた婚姻

「久しくお目にかかりますご無礼をお許しください、アスリアス王国第一王子様」
「っ……!!」
 リュカの後ろから出てきたその人物に私は声にならない声を上げた。
 ある程度いつか来るであろうことは予想していたがあまりにも早すぎる。
「久しぶりだな。ストラス」
 ゆっくりと優雅に足を一歩一歩丁寧に運ぶストラスは私がよく知っている彼だ。黒いフードを手で頭から払うと灰色の美しい髪を覆うように包帯が巻かれていた。
「手紙は受け取ったぞ。思ったより早かったな」
 ストラスはラドゥの前に跪いて頭を下げた。灰色の髪が美しく揺れた。
「ありがとうございます」
 ストラスはすぐに立ち上がると私とレオに目を向けた。私を観察するように体中眺めた。
 体は大丈夫かと聞きたいけれど言葉がでてこない。
 ストラスは私の手をじっと見つめる。灰色の切れ長の目がすこし鋭くなった。つられるようにして私も自分の手を見る。
「リア、元気そうでよかった」
 レオと繋がれている手を見なかったようにストラスは柔らかく微笑む。
 その笑顔に胸が痛んだ。
「ストラ……大丈夫なの?」
 ストラスが私のほうへ近づいてきて、両手を差し出した。
 見慣れたジェスチャーに頭よりも先に体が反応してしまった。磁石に引き寄せられる鉱石のように。
 レオの手を振りほどき、ストラスの胸に飛び込む。
「この通りだよ」
 ストラスの香りを胸いっぱいに吸い込んで彼の顔を見上げると優しい薄い色素の瞳が私を見つめていた。
 この通りだと言っているのに、頭にもそれに首にも包帯を巻いている。
 首はあの時の傷だろう。頭はレオに投げ出された時のものかもしれない。何から聞けばいいのかわからない。何から話せばいいのかも分からない。
 レオはストラスのことを見ていたのだから覚えているのだろうか。
 私は気になってレオを振り返った。
 レオは無表情でストラスを凝視している。ラドゥに出会ったときもレオは最初相手を観察するように無表情になっていた。
 ストラスはレオの存在を全く気にしていないのか私を見つめたままだ。
「あの……ストラ。頭も痛むの?」

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