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異種間恋愛

第15章 暴かれた婚姻

「少しね。でも、大丈夫だよ。それよりもこの傷になった原因が思い出せないことのほうが問題で」
「思い出せない?」
 頭を押さえながら白い顔が少し歪む。
「どうして森の外で倒れていたかが分からないんだ。気付いたらリアがいなくてすごく心配したんだよ」
 そうか。あの衝撃で一部の記憶がなくなってしまったのだろう。
 ということは私にあんなことを告白したことも、自殺を図ろうとしたことも覚えていない?
「ストラス」
 私がストラスの発言に戸惑っているとラドゥが呼びかけた。
 ストラスと私は同時に体を離す。
「ラドゥ様の目の前で申し訳御座いません」
「そんなことはよい。それよりも、せっかくの機会だ。相手をしてもらおうか」
 ラドゥはストラスにフェンシングの鎧を指さして見せた。
「そんな! ストラは怪我してるのよ」
「いや、リア。お誘いを頂いたんだ」
「ずっとお前を城に呼んで相手をしてもらいたかったんだが、父上がどうしても許可してくださらなくてな。こういう機会を待っていた」
 そういえばラドゥは競争相手がほしいと言っていた。その一番の相手がストラスだったが、国王がストラスの能力に玉座を狙われるのではと危惧していたからそれが叶わなかったということだろう。
 それにしても、こんな状態のストラスを相手にして勝ったからといって、それで喜べるというのだろうか。
「お前がストラスか」
 レオが急に口を開いた。低い声にストラスが初めてレオに対して反応をした。まるで王のような威厳のある声にストラスは目を細めた。
「はい。失礼ですが、あなたは?」
「その質問に答えるのは後だ。長くなるからな」
 レオの代わりにラドゥが答えたことにますますストラスの顔は険しくなった。
「そうですか。リアが随分とお世話になったみたいで、ありがとうございました」
 過去形で締められた言葉は何を意味するのだろう。
 ラドゥが突然手をぱんぱんと叩いた。
「もうそのへんにしろ。早く勝負がしたい」
 さすが自分勝手な王子だ。
「怪我人相手にか?」
 レオがラドゥに聞くとラドゥは不敵に笑った。
「そうだ。まあいい、見ればわかる」
「何がわかるのよ! ストラの怪我がひどくなったらどうしてくれるっていうの」

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