
異種間恋愛
第16章 見えない想い
「ふん。調子が狂うな」
ラドゥが鼻をならして目の前にある皿を睨んだ。
「どうかされましたか?」
頭に包帯を巻いたままのストラスが穏やかな表情でラドゥを見てから私ににっこりと笑いかけた。安心して、とでも言うように。
「どうもこうも……ティオンが食事の誘いを断るなんて俺も舐められたものだ」
食卓を囲むのはいつもと変わらない人数。三人。後ろに立ったまま控える執事やメイドの数も顔ぶれも変わらない。けれど、レオがいない。
「体調を崩されているんでしょう。仕方ありませんよ」
「体調? それはお前のほうだろ」
「僕は大丈夫ですよ」
「はあ」
ストラスとラドゥのやりとりを聞きながらも、私は食事の場にさえ出てこないレオにショックを受けていた。
私がずっと抜け殻のようになっていることをストラスは気付いている。幼いころから私の異変や感情の波には誰よりも早く気づいてしまう彼だから。
「リア、お前も体調が悪いのか? 顔が真っ青だぞ」
「う、ううん。そんなことないわ」
隣りのストラスが心配そうな灰色の目で私を覗き込む。
あの時、私をちゃんとした気持ちでレオの元へ行かせてくれたのに……ストラスにも申し訳ない気がしてきて私は反射的に目を逸らした。
全て、私の意識が低かったのが原因なのだ。婚姻、ということを軽く見すぎていた。レオに抱いていた感情は禁断のものだったのに、そんなことすら考えたこともなかった。
最低だ。自分がとてつもなく情けない。
レオと出会ってから自分を卑下することもなくなってきていたのに、ここに来てまた自分のことが嫌いになるなんて思ってもみなかった。
周りの環境が変わって自分が良い方向へ向かうなんて都合がよすぎた。自分は自分自身でしか変えられないに決まっているのに。
「リア、ごめんね」
ラドゥに聞こえないよう小さな声で囁くストラスの声。やっぱり安心できる声だ。
私は首を振った。
「ううん。私が甘かったの」
そう言ってストラスを見るとなぜかストラスのほうが泣きそうな顔をしていた。
「私もう甘えない。自分のやるべきことをするわ」
フローラさんの想い人は今どうしているのだろう。自分のことなんかで悩んでいる場合じゃない。
「リア」
「ストラス、ありがとう」
ラドゥが鼻をならして目の前にある皿を睨んだ。
「どうかされましたか?」
頭に包帯を巻いたままのストラスが穏やかな表情でラドゥを見てから私ににっこりと笑いかけた。安心して、とでも言うように。
「どうもこうも……ティオンが食事の誘いを断るなんて俺も舐められたものだ」
食卓を囲むのはいつもと変わらない人数。三人。後ろに立ったまま控える執事やメイドの数も顔ぶれも変わらない。けれど、レオがいない。
「体調を崩されているんでしょう。仕方ありませんよ」
「体調? それはお前のほうだろ」
「僕は大丈夫ですよ」
「はあ」
ストラスとラドゥのやりとりを聞きながらも、私は食事の場にさえ出てこないレオにショックを受けていた。
私がずっと抜け殻のようになっていることをストラスは気付いている。幼いころから私の異変や感情の波には誰よりも早く気づいてしまう彼だから。
「リア、お前も体調が悪いのか? 顔が真っ青だぞ」
「う、ううん。そんなことないわ」
隣りのストラスが心配そうな灰色の目で私を覗き込む。
あの時、私をちゃんとした気持ちでレオの元へ行かせてくれたのに……ストラスにも申し訳ない気がしてきて私は反射的に目を逸らした。
全て、私の意識が低かったのが原因なのだ。婚姻、ということを軽く見すぎていた。レオに抱いていた感情は禁断のものだったのに、そんなことすら考えたこともなかった。
最低だ。自分がとてつもなく情けない。
レオと出会ってから自分を卑下することもなくなってきていたのに、ここに来てまた自分のことが嫌いになるなんて思ってもみなかった。
周りの環境が変わって自分が良い方向へ向かうなんて都合がよすぎた。自分は自分自身でしか変えられないに決まっているのに。
「リア、ごめんね」
ラドゥに聞こえないよう小さな声で囁くストラスの声。やっぱり安心できる声だ。
私は首を振った。
「ううん。私が甘かったの」
そう言ってストラスを見るとなぜかストラスのほうが泣きそうな顔をしていた。
「私もう甘えない。自分のやるべきことをするわ」
フローラさんの想い人は今どうしているのだろう。自分のことなんかで悩んでいる場合じゃない。
「リア」
「ストラス、ありがとう」
