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異種間恋愛

第2章 出会い

「……はぁっ、はぁっ、どこにいるんだろ」
 私は夕日色に染まる木々の間をすり抜けるように走っていた。
 ちゃんとお礼もしないまま、どこかに消えてしまうなんて……と考えたが当り前なのかもしれない。
 急に平和な村に大きな獣が現れれば村人は驚き怯えパニックになり、若い勇敢な男たちが大勢で捕えようとすることは目に見えている。
 小さな村の中では何か緊急な事件や事故が起きた時に活躍することで男は注目を集める。
 女は容姿、男は行動力というわけだ。
 だいたいあんな大きな獣がここら辺に生息しているなんて村一番の老人も知らないだろうし、なによりも人間の言葉を話すのだ。
 なにか能力をもった者の化身か怪物の類であるとしか考えられない。
 昔話にヘラクレスがネメアの獅子を倒すというものがあるが、この獅子も実はただの獣ではなく怪物の父を持ち、兄弟にはケルベロスやヒドラという怪物がいたという。
 ストラスが運ばれていくのを見届けた後、私の足は自然と森の奥へと向かっていた。
 幸い、ストラスの騒ぎで皆の注目がストラスに集中していたため誰にも気づかれないで済んだ。
 森には普段近くに住む村人すら小さな獣や怪物を恐れて森には近寄らないのだ……あの大きな獣のことを知ったとなると集団移住しかねないかもしれない。
 私が森の中を把握しているわけは全くなく、実は今日初めて入ったのだ。
 日が沈みかけると急に不気味な顔を見せ始めた森は私にとって恐ろしくもあったが、なぜか不安にはならなかった。

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