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異種間恋愛

第16章 見えない想い

「リア。これ以上レオン様に誤解されたくないなら、僕を別の部屋にやるべきだよ」
「ストラ。私、明日から城を調べてみようと思うの。連れてこられた人たちがどこにいるのかさっぱり分からない。ラドゥに言ったら動けなくなるから……え?」
 ストラスのシャツのボタンをつけている手をストラスによって止められた。
「だめだ」
「なにが?」
 ストラスを見れば険しい顔をしている。ただ単に頭が痛むからというわけではなさそうだ。
「大人しくしていて。せめて僕の体が元に戻るまでは……。リア一人で調べるのは危険だよ」
「でも、できるだけ急ぎたいの」
「気持ちはわかるけど、危険すぎる。知りすぎてしまえばいくら王族とは言ってもどうなるか分からないよ。僕も庇い切れる自信がない」
 そんなこともう知っている。
「……分かった。大人しくしてる。だからもう今日は寝て。目の下に隈ができてきてるわ。頭痛いまま急いでラーナに来て、フェンシングの相手を何度もさせられたんだもの」
 私はストラスの頭をゆっくりゆっくり慎重に撫でた。
 ストラスは気持ちよさそうに瞼を閉じてくれた。
「おやすみ」
 この部屋のベッドは前までストラスと一緒に寝ていたものより断然広い。私がストラスの横に寝ても寝返りがうてくるくらい余裕がある。
 それでも私はベッドに横になりたいとは思わなかった。
 レオのことで頭が支配されそうになる。今、レオは何をしているだろう。
 思い切って隣りの部屋に行ってみたい気持ちとそれを恐れる気持ちとが混沌とした渦を作っている。
 優柔不断な思いを叱りつけるように両方の頬をぱちんと両手で叩いた。
 ストラスを起こさないようにゆっくりと机へ移動すると手紙を書き始めた。
 言葉を選んでいると時間だけが過ぎていく。想いが伝わるように、言葉を繋げていく。
「できた……。あれ、朝日?」
 ようやく書き終えた頃には紺色の空の下からオレンジ色の朝日が出てくるところだった。こんなに時間がかかるなんて思ってもいなかった。
 私は急いでレオの部屋の前へ行った。扉の下の隙間に手紙を差し込んで、足音を立てないように戻った。

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