テキストサイズ

異種間恋愛

第18章 王子の暗闇

「あの女の服屋は街でも評判だそうだな」
「なん、で……」
 もしかしてフローラさんのことを調べた?
 ラドゥが真面目な顔になる。それでも私の顔を掴んだままだ。
「……お前はあの女の婚約者を取り返しにきたのか?」
 ……。
 長い沈黙が流れる。
 私は完全に呼吸が止まっていた。ラドゥの顔が目の前にあるのに私の目には何も映らない。いや、映っているのに映っていない。
「図星か」
「……ええ。そうよ」
 ラドゥの手を払いのけると後ずさって距離を取った。
「女の名前はフローラ。お前は森を出てすぐに女の店に転がり込んで、服を着せてもらい、女と一緒に店の宣伝をした後に女と昼食をとった。その帰りに俺に会った」
「調べたの?」
「ああ、リュカは抜かりないからな」
 ああ、だからか。さっきのリュカの態度といい最後に見せた目つきといい。謎が解けた……が、どうしよう。
 パニックになっても仕方がない。
 もう牢獄に入れられるなり刑罰を与えられるなら、この際、言いたいことは言ってやろう。
 私は息を吸い込んだ。
「あなたたちは民の犠牲の上に自分たちの生活が成り立っていることを意識してない。それどこか、誰かの大切な人たちを私利私欲のために連行しては亡骸を遺族に送りつける。この現状は何? 何がここで起こっているのか国民は知る権利がある。私だってそうよ。だから、それを知るためにきた」
 ラドゥの冷たい視線を堂々と受け止めてやる。
「知ってるんでしょう? 全国から集めてきた人たちはどこで何をしてるの!?」
 最後のほうは投げやりになって叩きつけるように叫んでいた。
「それなら最初からそう言えばいい。お前は王族だ。教えないわけにはいかないだろ」
 え?
 思いがけない返答に私のほうが戸惑ってしまう。
「連れてきた男どもはここから近い分野別の研究所で働いている。お前は知らないだろうが、選んで連れてきた奴らはそれぞれに専門分野で生かせる才能を持った奴らだけだ。そこで他国よりも早くずば抜けて便利で画期的な製品を発明させる。そのおかげで今は貿易黒字がうなぎ上りだ」
「でも、その黒字が民へ回ってきていないわ。どういうこと? 民が築いた財産をなぜ民に返さないの?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ