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異種間恋愛

第18章 王子の暗闇

「たすけ……レ……んっ」
 咄嗟に出てきた名前はレオのものだった。もう嫌われているのに……図々しい女だと自分でも思った。
 しかし最後まで言う前にラドゥに口を手で塞がれていた。
 馬乗りになっているラドゥの体重で身体を動かすことはできない。
「良い胸だ」
 レオが胸に手を伸ばそうとするので自由になった両手でラドゥの肩を押した。
「邪魔」
 それだけ言うとラドゥは首につけていたネクタイを素早く解き私の両手首にきつく巻きつけた。
「助けを呼んでも無駄だぞ。ストラスはビビアンとかいう女と街に出ている。レオは俺の側室候補の女とずっと一緒に離れにこもっている。何をしているかは知らないがな」
 私の考えを見透かすように言い放たれたその言葉に絶望した。
 レオ……何をしてるの?
 勉強だよね?
 そう願いたい。
 ……でも、もう私が気にすることじゃない。レオに愛する人ができそうならそれを応援するくらいしか私にはできない。
「健気だな。いや、馬鹿って言ったほうがしっくりくるな」
 そう言いながらラドゥが胸に手を伸ばす。
「んっ……やあっ」
 何とも言えない不思議な感覚が麻酔のように体中を駆け巡る。
 大きく揉まれている胸は形を変えてラドゥを楽しませる。
 誰にも、触られたこと……なかったのに……。
 悔しい。
 悲しい。
「すご」
 ラドゥが独り言のように呟く。
 そしてその口で胸の突起を含もうとした。
「いやーーーーーっ!!」
「リアっ!?」
 扉が乱暴に開く音と同時に光の速さで部屋に飛び込んできたのは紛れもなくレオだった。
「レ、オ?」
 身体から湯気が出そうなほど怒りと走ってきたせいで火照っている。
「ふざけた真似を……っ」
「くっ……」
 レオがラドゥの横顔に向けて力いっぱい拳をぶつけた。
 ラドゥは横に転がった。
 私は呆気にとられて仰向けになったまま上にいるレオを見上げていた。

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