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異種間恋愛

第18章 王子の暗闇

 レオの顔は今まで見たことがないくらい怒りで一杯になっていて、その顔のまま私の身体を持ち上げた。
 肌蹴ている肌を隠すように破かれた布きれを胸にかき集めた。
「怪我はないか?」
 そう言いながら私の身体をぎゅうっと抱きしめた。
「……うっ、ううっ……わああ」
 レオの暖かさと駆けつけてくれた嬉しさに耐えられなくなった私は大声で泣く。
 レオが私をソファに座らせ、手首に巻きついたネクタイを解く。
 そして、そのまま私を抱きしめなおしてくれた。レオの太陽の香りが鼻から入ってきて肺を満たす。
 それと同時に私の気持ちも満たされていった。
 だから余計に嗚咽が止まらなくなる。
「リア、リア……悪かった。リア。リア……っ」
 何度も名前を呼んでくれるレオに応えることもできなくて、私はレオの胸に顔をうずめたまま子供のように泣きじゃくる。
「痛い所はないか? 本当に怪我は?」
 ラドゥに触られた身体がレオに包まれて綺麗になった気がした。
 でも、唇も口内も……。
「レオ、キスして……」
 レオの体が小さく反応した。
 青い美しい目が見開かれた。それでもすぐに真剣な顔になって頷く。
 レオの唇が私の唇に触れた。
 触れるだけのキスは初めてレオと交わしたものと変わらない。獣の姿のレオも人間の姿のレオもレオだった。
「もっと」
 唇が離されると私は必死になって急いで言う。レオは息を呑んだ。
「リア」
 小さく叫ぶとキスが降ってきた。触れるだけのキスが何度も繰り返される。
 触れた瞬間に離れるのが名残惜しく、レオの無防備に半開きにされた歯の隙間に舌を入れた。
 目を閉じているけれど、レオが戸惑う様子が伝わってくる。
「んっ……れお……」
 レオの舌が絡まりあう。ラドゥに怪我されたところが浄化されていく。
「リア……。悪い」
 息苦しくなった私たちは一度離れた。
 レオは申し訳なさそうに謝る。
「ううん。レオ、ありがとう」
 よく見ればレオの瞳が潤んでいる。
「どうして、来てくれたの?」
「お前の声が聞こえた。これ、着てろ」
 羽織っていた薄手のカーディガンを胸にかけるとレオは屈んでいた背を立たせた。

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