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異種間恋愛

第18章 王子の暗闇

「どういうことか、説明してもらおうか」
「見た通りだ。リアを襲っていた」
 床に胡坐をかいて座っているラドゥの顔はまた意地悪く歪んでいた。
「お前……っ」
 レオがラドゥをまた殴りつけようとする。
「レオ、やだっ!」
「何故庇う?」
 レオの苛立った声。
「そんな奴のためにレオの手が汚れるのが嫌なの。お願い、やめて」
 レオが振り上げた腕をおろした。
「理性まで手放したか、馬鹿王子」
「はは。初めからそんなもの持ち合わせていない」
「お前……っ」
 レオが怒りに耐えているのがその握りしめられた拳から伝わってくる。
「それに、同意の上だ」
「は?」
「そうだろう、リア」
 ラドゥがにやけ顔で私を見た。その赤い瞳が恐ろしくて私は身を縮めて視線から逃げるように顔を逸らした。
「何を馬鹿なことを。頭がおかしくなったか?」
「おい、リア。あの女がどうなってもいいのか?」
 レオの言葉を遮るように突き放たれた言葉。
 フローラさんの……こと?
「お前が俺を誘惑したんだろ。わざと嫌がってみせるのが得意みたいだな。まあ、俺もそういう趣味だからちょうどよかったが、おかげで邪魔者が入ってきただろ。どう償ってもらおうか」
 ぞっとするような言葉を浴びせかけられて身震いする。
「それとも、女に償わせようか?」
「……」
 フローラさんのおじいさんに聞いた恋人同士を切り裂いた生々しい話が蘇る。
「やめてっ!」
「それならどうすればいいのか分かるな?」
 さっきまで一瞬でもこんな悪魔に見惚れてしまった自分が憎い。
 美しいのは見た目だけの、悪魔。
「リア、どうした? ひとりで抱え込むな。俺がなんとかする」
 レオは私の様子が変わったことに気付いて優しく声をかけてくれた。嬉しい。
 でも……ごめん。
「ちょっと遊んでただけなの。本当に。だから、大丈夫よ」
 レオの顔が見れない。
「お前のだいじょ……」
 いつものセリフ。そんなこと言われたらまた泣き出してしまうから私は言葉を遮った。

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