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異種間恋愛

第2章 出会い

 顔をあげるとどこから来たのか大きな獣が伸び伸びと傍にあった大きな岩の上で寝そべってこちらを興味のなさそうな瞳で見ていた。
 よく見れば瞳が青い。
「どうしているの?」
 探していたが、急に現れるとなんと言っていいかわからず私は素っ頓狂な質問をしてしまった。
「お前の叫び声がうるさかったから来てやったのになんだ、その言い草は」
 私は急いで涙を拭った。
「あの……さっきは本当にありがとう。彼が自分を傷つけようとした時もあなたが出てきてくれなければどうなっていたことか……想像するだけで恐ろしいの。だから本当に本当にありがとう」
 大きな獣にゆっくり近づいて行き、手を伸ばせばその柔らかそうな毛並みに触れることができそうなところまで来て止まった。
 近くでよく観察すると全長3メートルはあるであろう巨体に黒っぽい色をした立派なたてがみと薄暗い森の中でも輝くような黄金色をした毛は美しく、大きな顔の上についている耳がなんとも愛らしい。
「別に助けたわけじゃない。勘違いするな」
 そう言い、私から顔をそむけた。
「でも、ありがとう」
 私は頭をぺこりと下げる。
「お前、俺が何に見える?」
「ライオン」
 ふいに尋ねられた問いに私は迷うことなく答える。
 ライオン以外に何だというのか。
「恐くないのか?」
 顔をそむけたまま尋ねる目の前のライオンは可愛く見えた。
「少し、恐いわ」
「そうか」
 そう言うとライオンは身体を起こした。
「ま、待って!」
 私が慌ててどこかへ行こうとするライオンを止めると目と目の間に皺を寄せてこちらを見た。これが驚いている表情なのかもしれない。
「でも、恐いままじゃ嫌なの」
「は?」
「恐いものを恐いままにしておくのが恐いの。分かりにくわね……えっと、なんて言えばいいのかしら……うーん」
 なんでもそうだった。高いつり橋が恐くて嫌いだったけれど、大人たちが呆れるほど橋の前で橋を睨みつけ続け、恨みでもあるかのように一歩一歩ゆっくりと足元の板を睨みつけながら橋を何往復もしたり、蛇と闘ったこともあった。ストラスたちに止められ、引き分けと終わったが。

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