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異種間恋愛

第3章 不器用な優しさ

 素直に従って自然にできた緑の木々に囲まれた一本道を歩くと急に視界が開け神秘的で言葉にならないほど美しい泉が現れた。
「うわあ……」
「綺麗な水がずっと湧いているから安心して水浴びしろ。飲みたいなら真ん中まで入って湧き出ている所から飲めばいい」
 レオは私が自分の汚れた服と身体を見ていたのを知っていたのかもしれない。
 どうしてこんなに優しくしてくれるのだろう……。
「本当にありがとう。すごく嬉しい」
 昨日言った言葉を再度言うとレオは何を勘違いしたのか「俺が泉を湧かせたわけじゃないぞ」と言って長く可愛らしいしっぽで泉の水と遊び始めた。
 私は言葉に甘えて早速水浴びをしようとワンピースの裾をまくり上げようと手を伸ばした時、あれ?っと思った。
 なぜか脱ぐことができないのだ。途端に顔が焼けるように火照り出し、ワンピースの裾を元に戻すと泉の水を覗き込んだ。
 レオは私のことなんか気にしていないかもしれないけれど、私は恥ずかしい。
 動物に裸を見せるのが恥ずかしい、という感情ではなくレオに見られるのが非常に恥ずかしいのだ。
 だいたいレオは元からライオンではなかったはずだ。人の姿をしていた可能性だって高い。
 それでも私のことを女として全く意識していないなんて……。
「また百面相ごっこか?」
「あっ、だって……もおっ」
人間なら言葉を使え」
「レオって人間だったの?」
「……関係がないだろ。ほら、さっさと水浴びしろ」
 やっぱり言いたくないのだ。
「関係あるわよっ。わ、私だって一応女の子なんですっ」
「は……?」
 レオは大きな口を開けた。中に鋭い牙が見えたけれどそんなことを気にする暇がないほど私は火照る顔をどうしようかと慌てていた。
 あれ、どうしようかなんて考える必要がないじゃない。目の前にあるのは透き通った冷たい水だ。
 手で水を掬うと男らしく豪快に顔にかけた……女の子だと言った後すぐにすることではないだろうが。
 顔は少し冷めたが体中が火照って、汗がじわりと出てくる。
「きゃっ」
 今度はもっと腕全体を泉に浸し水を掬おうとしたら見事にバランスを崩し泉の中へ飛び込んでしまった。

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