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異種間恋愛

第3章 不器用な優しさ

 生まれてこのかた浴槽以外の水場に浸ったことはなく、驚くと同時に鼻からも口からも大きく水を飲み込んでしまい、一度水から出ようと試みたものの頭が重く痛くてまた水の中へ倒れ込んでしまった。
 レオの頭が私のお腹の下に現れたかと思うと下から物凄い力で私の身体は持ち上げられ、自然と水の外に出ることができた。
「馬鹿か」
 草の上に身体を横たえて荒い息をする私の耳元で低く妙に色っぽい声が聞えた。
「けほっ、あり、がと……ごほっ」
「……ふっ、はははっ」
「え」
 重たい頭とつんと痛む鼻を押さえながらレオを見ると朗らかに笑っていた。
 ライオンらしからぬ爆笑する姿に私はしばらく声を出すこともできず虚ろな瞳でレオに視線を送っていた。
「はあ……笑い疲れた」
 一通り笑って落ち着いたのかレオは何事もなかったかのように伸びをした。
「人が苦しい思いしてるときになに笑ってくれてんの」
 身体が本来の動きを取り戻すと我に返った私は頬を膨らませてレオを睨んだ。
「ああ、悪い。でも、転んだところも咳込むところも面白くて……」
「レオの意地悪っ!! もう、あっちへ行ってて!」
「わかったわかった」
 レオはまだ小さく笑いをこらえながら泉から出て行った。
「これでやっと水浴びができるわ……あ」
 このワンピースは裾を捲くって脱ぐことはできない。ドレス程ではないがウエストや胸元がきっちりしまっているデザインの物で背中で紐がクロスに結ばれている。
 自分ではちょうど手の届かない位置に結び目があるためいつもストラスにやってもらっていた。
「あのっ」
 泉に背を向けて歩き出していたレオを呼びとめる。

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