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異種間恋愛

第3章 不器用な優しさ

「こっちへ来て」
 レオはのろのろと戻ってきた。
「笑われて怒っていたんじゃないのか?」
「お、怒ってるわよ。でも、この服ひとりじゃ脱げなくて……」
 レオはなぜか一歩後ずさった。
「この、ここにある紐を両方引っ張ってくれればいいんだけど」
「そ、うか……。水浴びするってことは服を……だからさっきお前」
 そういうことか。レオは服を脱ぐということを考えていなかったのだ。
 なにも男と思われてたり動物と一緒だと考えられていたわけではないのだ。
「だから、お願いできる?」
「ライオンが器用だと?」
 私はレオの大きな前足を見つめる。爪が鋭く尖っていた。
 服を着たまま水の中にはいったものの、着心地は悪く正直今すぐ脱いでしまいたい。
 私は途方に暮れた。
「……はあ。分かったからじっとしてろよ」
 どうするつもりなのだろう、と思ったがレオが適当に受け入れるとも思えず頷き背筋を伸ばした。
 近くでレオの気配がする。いや、近いなんていうものではない……私の首の後ろにレオの温かい息がかかると思わず肩が上下した。
「おい、本当にじっとしてないと危ないぞ」
「ご、ごめんなさい」
 レオの顔が私の肌のすぐ傍にあると思うだけで背筋がぞくりと反応してしまう。初めての感覚に戸惑いながらもできるだけ身体を動かさないようにと私は舌を歯で噛んだ。

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