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異種間恋愛

第4章 獅子の秘密

「おい、おいっ」
 耳元で誰かの苛立っている声がする。
 こんなに気持ち良く眠っているのに……。
「ん……?」
 意識をまた手放し夢の中へ旅立とうとすると身体を大きななにかに揺さぶられた。
 強い力で揺さぶられたため私はぐるりと身体を一回転させてしまい、さすがに気分が悪くなって目を開けるとレオが私の顔を覗き込んでいた。
 すごく不機嫌そうな表情で。
「お前、栄養摂れよ。ほら」
「さ、かな?」
 見れば私の両手を合わせたより大きな魚が数匹草の上に転がっていた。
 寝ぼけた頭を手でおさえながら立ち上がると呆然と魚を見つめる。
 町でもよく見るものと同じようだが、それよりは大きい。
「川があるの?」
「ああ、泉の向こうにな。でも水浴びは泉だけにしろ。川は流れが速いからできるだけ近づくな」
 心配、されている?
 そう思ったら泉にいた時のように下腹部がきゅうっと締めつけられた。
「わかったな?」
「う、うん」
 振り絞るように返事をする。喉元にもやもやしたものが込み上げ、それが私を苦しめている。
「ねえ、でもこの魚どうやって食べるの?火は?」
 レオは傍で跳ねていたジャスミンの方に目をやると、ジャスミンの周りには枯れ草や小枝がたくさん転がっていた。 
 ジャスミンは何でも集めるのが得意らしい。
「ジャスミン、すごいわ。ありがとう……。で、でも火はどうやって熾せば?」
 マッチがないのにどうやって火をつけるのか皆目見当もつかない。
 レオは何も言わずに右の前足をジャスミンの集めてきてくれた枯れ草の上に置いた。そして、そっとその足を持ち上げると柔らかいオレンジ色が現れた。
「え? えぇっ!?」
「うるさい」
 ただのライオンではないと分かっていたけれど、魔法使いのような術か魔族や神格のような能力を使えるところを見ると本当にレオは何者なのかますます謎が深まった。
 レオは私に魚をくし刺しにするように促すと小枝に突き刺した魚を口で咥え、火の周りに立てていった。十分器用じゃないか。

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