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異種間恋愛

第4章 獅子の秘密

「違うっ、後ろだ!!」
「あ、ああ……また逃がしちゃった」

 私はレオと一緒に川に来ていた。川の激しい流れを眺めたいと思い立ったのは今日の朝で、行きたいと言うと最初は危ないからと反対されたがレオが一緒に行く、日が暮れるまでに大きな木(私はこの木の周りのことを家と呼ぶことにした)に戻ることを条件に許してくれた。
 川の流れをじっと見ていればこれからの事の何かが分かるだろうという安易な考えだった私の脳みそは見事に打ち砕かれた。
 幅の小さな川にはごろごろと大きな石が転がっていて流れが急も急。想像通りの川なのにただただ眺めていても何も頭に浮かんでくるものはない。
 いや、ないというよりも隣にぴたりとくっついているレオのことが気になって他のことなど何も考えられなくなるのだ。
 それならいっそ考えるという行為を放棄してしまえと川へ足を踏み入れたのだ。
 しかし、そこからが問題だった。
 レオは私が入水自殺でもすると思ったかのような反応で、物凄いスピードで私の頭上を飛び越え、目の前に大きな水しぶきと共に現れた。そしてじっと私の顔を睨んだ。
「何をするんだ」
「何も」
「じゃあ何故はいった」
「なんとなく」
 といった無意味な会話をした後、レオが提案した。
「魚を獲るぞ」
 その言葉は宣言だったのか、誘いだったのかよく分からないがとりあえず私は「うん」と返事をした。
 でも、今は返事をしたことに後悔している。

「やっぱりこんな流れのとこで捕まえるなんて無理よおっ」
 嘆きともとれる叫び声をあげるとレオは耳をぴくりと動かした。
「無理じゃない。お前がとろいだけだ」
 とろいだなんて今まで一度も言われたことがない。自分が鈍くさいタイプの人間だなんて思ったことも一度もないのに。

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