
異種間恋愛
第4章 獅子の秘密
レオの動きは信じられないほど機敏だ。泳いでくる魚を前足やら後ろ足で掬うようにして下手にいる私の方に放り、私が着水した後の魚を獲るというえらく野性的なスポーツのようなものを生み出した。
「う、うるさいーっ。だいたいね、レオが凄すぎるのよっ」
「……凄くはない」
「そこは謙虚なのね」
百獣の王が言う台詞ではない。私は面白くなって笑いだしてしまった。
レオと逢ってからよく笑っている気がする。
「別に謙虚ではない。事実だ」
「もういいから、レオ。今日の晩ごはんの分だけ魚獲ってよ」
「わかった」
私はレオの邪魔にならないようにと川の端までゆっくりと歩いていく。右からくる急な流れに時々足を取られながらも大きな石で体を支え、なんとか辿りついた。
川から出るとずっと冷水に浸かっていた足は思いのほかかじかんでいたようで温かい空気と太陽に愛された草の上に脚ごと投げ出せば、じんわりと解凍されていく心地がした。
しばらく待っているとレオが口に3匹魚をいっぺんに咥えて持ってきた。
そして、またすぐに獲りに向かおうとするレオの背中に触れた。
「なんだ」
「もう、いいじゃない」
「足りるのか?」
「うん」
レオは食べても1匹だし、昨日はたくさん食べたけれどあれは美味しさに感動したのとずっとタンパク質を摂っていなかったから体が勝手に欲したからだ。
それより、こうやって魚が1匹1匹活き活きと泳いで、生きるためにこの急な流れの川を通っているのを見続けた私はあまり命を奪いたくなくなっていた。
もちろん、食物連鎖というサークルの中で私たち人間も含め全ての生物は共存しているのは知っている。それなら、必要最低限の殺生だけでいい。
私の町には魚屋も肉屋も野菜屋もあったけれど、どこの店も商品を余ったからといって捨てたりは絶対しなかった。余ったものは貧しい家へ届けられたり、犬や猫などの餌になった。
そもそもあまり売れ残らないのだが、もし余ればそれも恵として受け取り決して無駄にはしない。
それが当り前のようにあった私の生活ではあったが、こうして実際に生きている魚が自分の食事となるために死ぬのを見ていると心に感じるものがあった。
「う、うるさいーっ。だいたいね、レオが凄すぎるのよっ」
「……凄くはない」
「そこは謙虚なのね」
百獣の王が言う台詞ではない。私は面白くなって笑いだしてしまった。
レオと逢ってからよく笑っている気がする。
「別に謙虚ではない。事実だ」
「もういいから、レオ。今日の晩ごはんの分だけ魚獲ってよ」
「わかった」
私はレオの邪魔にならないようにと川の端までゆっくりと歩いていく。右からくる急な流れに時々足を取られながらも大きな石で体を支え、なんとか辿りついた。
川から出るとずっと冷水に浸かっていた足は思いのほかかじかんでいたようで温かい空気と太陽に愛された草の上に脚ごと投げ出せば、じんわりと解凍されていく心地がした。
しばらく待っているとレオが口に3匹魚をいっぺんに咥えて持ってきた。
そして、またすぐに獲りに向かおうとするレオの背中に触れた。
「なんだ」
「もう、いいじゃない」
「足りるのか?」
「うん」
レオは食べても1匹だし、昨日はたくさん食べたけれどあれは美味しさに感動したのとずっとタンパク質を摂っていなかったから体が勝手に欲したからだ。
それより、こうやって魚が1匹1匹活き活きと泳いで、生きるためにこの急な流れの川を通っているのを見続けた私はあまり命を奪いたくなくなっていた。
もちろん、食物連鎖というサークルの中で私たち人間も含め全ての生物は共存しているのは知っている。それなら、必要最低限の殺生だけでいい。
私の町には魚屋も肉屋も野菜屋もあったけれど、どこの店も商品を余ったからといって捨てたりは絶対しなかった。余ったものは貧しい家へ届けられたり、犬や猫などの餌になった。
そもそもあまり売れ残らないのだが、もし余ればそれも恵として受け取り決して無駄にはしない。
それが当り前のようにあった私の生活ではあったが、こうして実際に生きている魚が自分の食事となるために死ぬのを見ていると心に感じるものがあった。
