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異種間恋愛

第6章 アスリアス王国の秘密

 そういえばアスリアス王国から直々に送られてきた手紙を持ち喜々としていた若者たちは誰もかれも腕っ節が強く肉体労働が得意な者や専門分野で特異な才能を発揮する者たちしかいなかった。
 そして、彼らはラーナへ行き、二度と帰って来なかった。ストラスが王族でなければ確実に手紙が届いていたと誰もが噂し合っていたのも思い出した。
 その話を耳にはさむ度、ストラスは確か……何かに耐えるような表情をしていた。
「残念だが、本当のことだ。地方から呼ばれた民は厳しい労働の末に早死にしていく。王は民を消耗品だと考えているようにしか……」
「しょうもう……ひん」
 頬に滴がつたう。非情なことが現実に起きているなんて信じられなかった。町を笑顔で出て行ったお兄さんに優しくしてもらったことが蘇る。
 いじめられて路地裏で泣いているとそっとハンカチを差し出してくれて、家に招き入れようとしてくれたカイさん。私が家に入らないと言い張ったら、「じゃあ、泣き顔が見られないように」と言ってカイさんの大きなフードをかけてもらった。そして、私が落ち着くまで背中で私を隠してくれていた。
 カイさんは色々なことに知識が深く、弓を射るのも馬に乗るのも上手かった。歳の離れた妹もいて、いつもくっついて歩く妹に「ラーナに行って少し観光して帰ってくる、お土産は何がいい?」と旅立つ直前に泣きわめく妹をなだめていた。
 妹思いの優しいカイさんが、家族になにも知らせないで帰ってこないなんて、ラーナでの暮らしはそんなに楽しいのかしらと囁かれたが、皆本当は薄々気づいていたのかもしれない……非情で理不尽で軽蔑すべき現実に。

「……リア」
 レオが優しい力で私の頬に耳を擦りつけてくる。柔らかな黄金の毛に涙が染み込んでいく。
 あれ、いま私の名前が聞えた?

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