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異種間恋愛

第7章 新たな旅

 結局雨は夜になっても上がらず、一日中木の下でレオとふたりで空から落ちる滴の束を眺めていた。
 レオの焼いてくれた魚をふたりで食べて、ずっと並んで座っていた。初めてのことだった。旅に出る前はレオとずっと隣り合って座ることなんてなかった。
「今日は歩けなかったね」
「でも、もうラーナの近くまで来ている。焦らなくてもいいだろ」
「そう。ラーナには私ひとりで行くのよね」
 口にしてから後悔した。どこまで甘ったれているのかと自分でも軽蔑したくなる言葉だ。
「俺は、行けないんだ。すまない」
「あ、そんな謝ったりしないで。ここまで連れてきてくれただけでもすごく有難いんだから」
 暗闇の中、炎がレオの申し訳なさそうな険しい顔を映した。
「……心配だ」
「レオ」
 ぽつりと呟かれた言葉には私への想いが詰まっているような気がして不謹慎だけれど嬉しくなった。
「ラーナは表向き、栄えていて豊かに見えるかもしれない。けれど、人々の心はすさんでいてもおかしくない。そんな所にお前だけを行かせるのは……」
「確かにそうかもしれないけど、少し行って様子を見てくるだけよ。すぐ戻るから大丈夫。私を利用してくれるんでしょ?」
「……」
 手を伸ばせば簡単に触れる距離にいるレオ。私はそっと手を伸ばし、触れてみた。
 レオは黙ってされるがままになっている。レオが呼吸をする度上下する身体を撫でて、顔をうずめた。
 温かくて気持ちがいい。そういえば肌寒いどころか本当に寒くなってきた。
 しばらくして、黄金の毛並みから離れればレオが小さく唸った。
「なにかあればできるだけ大きな声で俺を呼べ。いいな」
 そんなに危険なことはないだろうけど、私はレオのために大きく頷いた。
「呼んだらどうするの?」
「駆けつける。俺の耳は良いからな、どこから聞えるのか分かる。鼻もいいから、お前の匂いでどこにいるのか分かる」
「……」
 私は考えた。レオが私を助けに来てくれるのはいいけれど、ラーナの人々は驚くだろうし、何をされるか分からない。レオを傷つけたくはない。絶対に。でもレオの言葉はすごく嬉しい。
「絶対に呼ばないって顔してるな」
「なっ」
 またしても心の内を読まれてしまった。
「俺の心配はするな。大丈夫だから、お前はお前のことだけ考えてろ」
「……はい」

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