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異種間恋愛

第9章 憧れの都

 森の木々がトンネルのように一本の道を作っている。
 この道の先にラーナがあると言う。レオはそこでぴたりと足を止め私の方に向き直る。
「いいか。無理はするな」
 レオの真剣な表情が凛々しく美しい。
「分かってる。足、ありがとう。これなら速く走れるわ。だから、心配しないで」
 昨日は前よりも丁寧に長い時間をかけて足と足首、ふくらはぎまで舌で撫でられて大変だった。
 放っておけば体全身を舐めるのではと思うほど熱心に癒してくれた。
 真面目なレオはただ私を心配してのことだろうけれど、私は切なさと嬉しさと何か分からない感情が渦巻いて体全体が締め付けられるように苦しく気持ちよくなってしまっていた。
「ジャスミンは連れていけ」
 ジャスミンはずっと私にくっついている。
「どうして?」
「なにかあったときのためだ」
 小さなリスが何をできるのかは分からないけど、私もジャスミンが一緒にいてくれたら心強いから承諾することにした。
「日が暮れるまでには帰って来い」
「うん。じゃあ、行ってきます」
 レオの不安な表情をしている顔をそっと撫でた。
「ああ。行ってらっしゃい」
 レオとするには少し不思議な会話だな、なんて思うと頬が綻んだ。
 ジャスミンを肩に乗せたままレオから離れるように歩を進める。
 木々のトンネルを抜けると舗装されていないでこぼこの道がまた続いていた。
 後ろを振り返る。レオの姿は森に隠されて見えない。もう一度「行ってきます」と呟いた。
「ジャスミン、行こう」
 ジャスミンはこくりと頷く。
 久しぶりに森から出て、緑の少ない道を歩くのは変な感じがした。懐かしいというより面白い。
 しばらく歩けば人の声が聞えてきた。賑やかで活気のある人々の笑い声、話し声……。

「わあ……」
 目の前に広がっていたのは今まで見たことのない光景だった。
 都、その言葉が相応しい。どの店も私のいた町のものとは比べ物にならないほど豪華な造りをしているし、その店の間を行き交う人の量が桁違いだ。

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