
異種間恋愛
第9章 憧れの都
初めて見る都の活気に私は圧倒されていた。
それにしてもこんな所に悪魔のような王がいるとは思えないほど人々は明るく活き活きしているように見える。
「あら、そこのお嬢さん。それは新しいデザインのワンピース?」
ぼんやり人ごみの中突っ立っていると灰色の髪をひとつに束ねた女の人が話しかけてきた。
その人は私の破れたワンピースを珍しそうにまじまじと見ていた。ストラスの傷を塞ぐ為に破られたワンピースの前の布は短く、後ろは元の長さというおかしな有様だ。
それに、なにより膝が見えてしまっているのが恥ずかしい。
「まあ、素敵ね。ちょっと、こっちへ来てよく見せてくれないかしら?」
「え、ええ。でも、これは……あのっ」
私の返事を聞かずにお姉さんは私の腕を掴むと人の行きかう中を上手く潜り抜け、お洒落な店の中に私を入れた。
「お洋服が沢山……。私、こんなに沢山のお洋服見たのは初めてです!」
そこにはずらっと色とりどりのカジュアルな普段着からフォーマルなドレスまでが揃っていて、女の子ならここで1日過ごすことも容易だろうと思う。
こまめに磨かれていることを想像させる床は上品な光沢のある黒い石。それに比べ、私のつま先が擦れて破れかかっている靴がどうしようもなく不釣り合いだ。
「初めて? もしかして都に来たのは初めて?」
「はい。いま着いたところで……」
「そうだったの。ごめんね、急に引っ張りこんじゃって」
「あ……いえ。すごく素敵なお店ですね」
「ふふっ、ありがとう」
お姉さんが笑うと小さい目がさらに細く線になった。すごく優しい表情だな、と感心してしまった。
「それより、地方ではこういうデザインのものが流行ってるの?」
お姉さんは私のワンピースを指差す。
「違うんです。これは、来る途中に……転んじゃって」
なんと説明していいのか分からず咄嗟に嘘を吐いた。
お姉さんは引きつった苦笑いをしている私の顔をじっと見てから今度は私の擦り切れた靴に目をやってから言った。
「そうだったの。長旅だったみたいね、ご苦労さま。ねえ、お礼がしたいから奥にいらっしゃい」
「え、お礼って」
と言い終わらないうちにお姉さんは例のごとく私を半ば無理矢理、店の奥にあった扉の中に招き入れた。
それにしてもこんな所に悪魔のような王がいるとは思えないほど人々は明るく活き活きしているように見える。
「あら、そこのお嬢さん。それは新しいデザインのワンピース?」
ぼんやり人ごみの中突っ立っていると灰色の髪をひとつに束ねた女の人が話しかけてきた。
その人は私の破れたワンピースを珍しそうにまじまじと見ていた。ストラスの傷を塞ぐ為に破られたワンピースの前の布は短く、後ろは元の長さというおかしな有様だ。
それに、なにより膝が見えてしまっているのが恥ずかしい。
「まあ、素敵ね。ちょっと、こっちへ来てよく見せてくれないかしら?」
「え、ええ。でも、これは……あのっ」
私の返事を聞かずにお姉さんは私の腕を掴むと人の行きかう中を上手く潜り抜け、お洒落な店の中に私を入れた。
「お洋服が沢山……。私、こんなに沢山のお洋服見たのは初めてです!」
そこにはずらっと色とりどりのカジュアルな普段着からフォーマルなドレスまでが揃っていて、女の子ならここで1日過ごすことも容易だろうと思う。
こまめに磨かれていることを想像させる床は上品な光沢のある黒い石。それに比べ、私のつま先が擦れて破れかかっている靴がどうしようもなく不釣り合いだ。
「初めて? もしかして都に来たのは初めて?」
「はい。いま着いたところで……」
「そうだったの。ごめんね、急に引っ張りこんじゃって」
「あ……いえ。すごく素敵なお店ですね」
「ふふっ、ありがとう」
お姉さんが笑うと小さい目がさらに細く線になった。すごく優しい表情だな、と感心してしまった。
「それより、地方ではこういうデザインのものが流行ってるの?」
お姉さんは私のワンピースを指差す。
「違うんです。これは、来る途中に……転んじゃって」
なんと説明していいのか分からず咄嗟に嘘を吐いた。
お姉さんは引きつった苦笑いをしている私の顔をじっと見てから今度は私の擦り切れた靴に目をやってから言った。
「そうだったの。長旅だったみたいね、ご苦労さま。ねえ、お礼がしたいから奥にいらっしゃい」
「え、お礼って」
と言い終わらないうちにお姉さんは例のごとく私を半ば無理矢理、店の奥にあった扉の中に招き入れた。
