
異種間恋愛
第11章 王子と獣
――はははっ
大きな気持ちのいいくらい大きな笑い声が聞えた。
王子が笑っていた。
「リスが友だちか。お前、なかなか面白いな。立て、こちらへ来い。顔をよく見せろ」
そのぶっきらぼうな口調がレオによく似ていた。
私は立ち上がり白馬の傍へ近づくと王子が馬の上から手を伸ばし、指先で私の顎を持ち上げた。
「ふうん……。お前を俺の嫁にしてやる。後ろへ乗れ」
……はあ? いま何と言われたのだろう。口をあんぐりと開けたまま慣れてきた目で王子の顔を見た。
小さな顔はストラスのような白い肌をしていた。整った眉、鼻、色気を感じさせる唇は人形のように完璧だ。しかし、その吊り上がった大きめの瞳は燃えているような赤色をしていた。まるで、悪魔のように……。
「見惚れるのは後にしろ。さっさと乗れ」
「ラドゥ様、なにを仰います! 正室候補はとっくに決まっております」
傍に控えていた男が慌てたように声を荒げた。
「構わん。俺の嫁だ。俺が決めてなにが悪い。とりあえず、この女を城に連れてゆく」
城に連れてゆく……私は全身の鳥肌が立つのが分かった。
どうしよう、どうやって逃げれば……。私が頭を回転させている間にジャスミンがするするっと服の中を通り、地面を駆けていった。なにか考えがあるのかもしれない。
「無礼をお許し下さい。ですが、この子はうちの使用人でございます。地方から連れて来た貧しい卑しい身分の娘にございます。そのような者を城に連れ帰っては王国の恥になるかと存じますが」
フローラさんが駆けよってくるなり、私の隣に跪いて大きな声で言った。
「その通りでございます。ラドゥ様、どうかお気を確かに!」
ここぞとばかりに男も加勢する。
フローラさんを巻きこんでしまった……ここで私が逃げればフローラさんはどうなるのだろう。
悪いようにしかならないだろう。ストラスに見つかる可能性はぐんと上がるが仕方がない。
私はぴんと背を伸ばして眉をひそめ跪くフローラさんを睨んでみせた。
大きな気持ちのいいくらい大きな笑い声が聞えた。
王子が笑っていた。
「リスが友だちか。お前、なかなか面白いな。立て、こちらへ来い。顔をよく見せろ」
そのぶっきらぼうな口調がレオによく似ていた。
私は立ち上がり白馬の傍へ近づくと王子が馬の上から手を伸ばし、指先で私の顎を持ち上げた。
「ふうん……。お前を俺の嫁にしてやる。後ろへ乗れ」
……はあ? いま何と言われたのだろう。口をあんぐりと開けたまま慣れてきた目で王子の顔を見た。
小さな顔はストラスのような白い肌をしていた。整った眉、鼻、色気を感じさせる唇は人形のように完璧だ。しかし、その吊り上がった大きめの瞳は燃えているような赤色をしていた。まるで、悪魔のように……。
「見惚れるのは後にしろ。さっさと乗れ」
「ラドゥ様、なにを仰います! 正室候補はとっくに決まっております」
傍に控えていた男が慌てたように声を荒げた。
「構わん。俺の嫁だ。俺が決めてなにが悪い。とりあえず、この女を城に連れてゆく」
城に連れてゆく……私は全身の鳥肌が立つのが分かった。
どうしよう、どうやって逃げれば……。私が頭を回転させている間にジャスミンがするするっと服の中を通り、地面を駆けていった。なにか考えがあるのかもしれない。
「無礼をお許し下さい。ですが、この子はうちの使用人でございます。地方から連れて来た貧しい卑しい身分の娘にございます。そのような者を城に連れ帰っては王国の恥になるかと存じますが」
フローラさんが駆けよってくるなり、私の隣に跪いて大きな声で言った。
「その通りでございます。ラドゥ様、どうかお気を確かに!」
ここぞとばかりに男も加勢する。
フローラさんを巻きこんでしまった……ここで私が逃げればフローラさんはどうなるのだろう。
悪いようにしかならないだろう。ストラスに見つかる可能性はぐんと上がるが仕方がない。
私はぴんと背を伸ばして眉をひそめ跪くフローラさんを睨んでみせた。
