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異種間恋愛

第12章 獣の正体と契り

 口と口を互いにくっつけたまま微動だにしない光景は不思議だろう。これをキスと呼んでいいものやら私には分からない。
 あまりに長くレオが口を離さないので私は鼻で空気を吸ったり吐いたりし始めた。
 ただ安心できた。レオの美しい姿をずっと見ていたかったけれど瞼を閉じた。
 するとさらに心地よくなってきた。
 仰向けに地面に寝ていると低い風が私の身体を撫でた。急に睡魔が襲ってきた……。
 こんな状況なのに……変なの…………。

――柔らかなウェーブのかかった長い茶髪……指にからめてみる。
 真珠のように白い肌に指を沈ませてみる。くすくすと可笑しそうに優しく笑う声に顔を上げる。
「ママ」
 私と同じ瞳をした女性がいた。
 その笑顔を見ただけで心が満たされた。だから、ママの細い身体にぎゅうっと抱きついた。良い香りがする……石鹸の香りだ。
 するとその人の手が私の頭を撫でる。愛しむように何度も何度もゆっくりと。
 それだけで涙が出そうになった。
「リア、絵本を読んであげましょうね」
 ママの声は今まで聞いたどんな女性のそれより遥かに美しく儚く、澄みきっていた。
「うんっ」
 この声でお話を読んでもらえるなんて、すごく素敵。私は頬を緩ませて頷いた。
 ママはどこからともなく小さな絵本を取り出した。表紙は擦り切れてタイトルが読めないし、絵もよく分からない。
 それでもその絵本が大事にされてきたと分かる。背表紙の破けた部分が縫い止められている。
 ママは最初のページを細い指で掬うように開いた。
 澄んだ声が物語を紡ぎ始める。
 台詞はママが読んでるとは思えないほどその人になりきって、抑揚もつけて読んでいく。
 絵を見せてもらえば、美しい絵がページにひとつずつ載っており、それがさらに私を物語の中へ導く。

 その内容は――

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