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合縁奇縁〜ついてまわる運命〜

第2章 居場所

「俺は、八田龍(りょう)。数学科の教師だ。このクラスには数Ⅰを教える。まあ、長い付き合いになるだろうから、よろしくな。そんじゃあ、とりあえず安藤、号令。」
号令とともに教室は静まり返る。へえ、数学か。なんか頭良さそうだもんね。私の目に映るのは、背の高い、20代前半のイケメンさんの喋っている姿。不意に先生と目が合う。いや、サングラスをかけているので実際合ったのかは分からないけど、なぜだか先生が私の方を向いてニヤッと笑っているように思えた。それは、何か面白いものを見ているというような笑いではなく、私のすべてを見透かしたかのような、そんな表情だった。私は見透かされたその過去を一瞬にして思い返す。そして、目をそらした先にいたのは愛瑠だった。大丈夫?と小声で聞いてくる愛瑠を見ずに笑顔で黙ってうなずく。どうして・・・。もう、忘れたいのに。うつむく遥の目に映るものは、過去の思い出したくない映像ばかりだった。

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