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HELLO ENDING〜君との思い出〜

第2章 計算

「…なあ、森田。」
「ん?」
「おいおい、教授に向かって"ん?"はないだろう。」
「親父が教授とか信じられねーよ。」
「まだ信じてなかったのか!私の講義まで受けたくせに!それに大学内では親子じゃないんだから親父って呼ぶな。」

大学内の廊下で隣を歩いている
俺より少し背が低くなった親父…
いや、森田教授は、深い笑いじわが印象的なこの大学の教授だ。俺とは対照的にユーモラスで明るくて、締めるとこは締めて、人気者。
俺は、友達がいないわけではないけど、
なんとなく避けられている…というか、皆近寄り難いんだろうか、あまり近づいてこない。
視線は感じるのに。

「お前、いつからメガネをかけるようになった」
「…忘れた」
親父は、しんみりした口調で
「母さんの事が、忘れられないか。ん?」
「…別に…」
「俺も忘れられないよ。お前のそのメガネを見て、ますます忘れられなくなった。」
「…あっそ…」

俺は素直になれない。
空気に耐えられなくて、興味もないのに廊下の壁にかけられた歴代の理事長の肖像画を見ていた。

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