喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第1章 ♣ここではないどこかへ♣
ポストカードはマリア像が映っている。どこの教会の写真かは知らないが、早妃が雑貨屋でひとめ見て気に入ったものだ。キリストを抱いたマリア像が上半身アップになっている。慈悲深い笑みを湛えながらも、どこか哀愁に満ちたその聖母の表情には奥深いものが漂っている。
それはやがて愛し子を見舞うことになる過酷な宿命を予感してのものなのだろうか―。
早妃は熱心なクリスチャンだったけれど、悠理は信仰心なんてものは欠片もなかった。ただ、そんな無信心な悠理ですら、何かを感じてしまうほど、そのマリア像の表情は見る者に何かを訴えるような語りかけるようなものがあった。だからこそ、早妃もひとめ見て欲しいと思うほど気に入ったのかもしれない。
一方のネックレスは、十字架を象ったモチーフがついている。近くの教会では日曜の午前中、大抵ミサが行われていた。早妃も毎週のように参加していたが、そのときには、この十字架を身につけて出かけていた。早妃らしい控えめなシルバーの小さな十字架が銀鎖についている極めてシンプルなものである。
―早妃。今、お前はどこにいる?
図らずも実里を愛するようになる前、早妃を失った直後は、よく早妃の夢を見た。
広い広い雪原を悠理はただ一人で歩いている。不思議な夢だった。
雪国なんて一度も行ったことがなければ雪原など歩いたこともないのに、彼は一人で雪野原を歩いていた。ひたすら歩いたその向こうに、早妃が待っていると判っているのに、いつまで歩いても早妃の許には辿り着かない。
早妃の気配は近くに感じられるのに、肝心の早妃は姿さえ見えなかった。あまりにもどかしくて、早妃に逢いたくて、夢中で手足を動かして先へ進もうとするのに、幾ら歩いても周囲の景色は変わらず、自分が進んでいるのか後退しているのさえ定かではなくなってくる。
そして、夢はいつも唐突に途切れた。
目覚めた自分の頬はいつも冷たい涙で濡れていた。
それはやがて愛し子を見舞うことになる過酷な宿命を予感してのものなのだろうか―。
早妃は熱心なクリスチャンだったけれど、悠理は信仰心なんてものは欠片もなかった。ただ、そんな無信心な悠理ですら、何かを感じてしまうほど、そのマリア像の表情は見る者に何かを訴えるような語りかけるようなものがあった。だからこそ、早妃もひとめ見て欲しいと思うほど気に入ったのかもしれない。
一方のネックレスは、十字架を象ったモチーフがついている。近くの教会では日曜の午前中、大抵ミサが行われていた。早妃も毎週のように参加していたが、そのときには、この十字架を身につけて出かけていた。早妃らしい控えめなシルバーの小さな十字架が銀鎖についている極めてシンプルなものである。
―早妃。今、お前はどこにいる?
図らずも実里を愛するようになる前、早妃を失った直後は、よく早妃の夢を見た。
広い広い雪原を悠理はただ一人で歩いている。不思議な夢だった。
雪国なんて一度も行ったことがなければ雪原など歩いたこともないのに、彼は一人で雪野原を歩いていた。ひたすら歩いたその向こうに、早妃が待っていると判っているのに、いつまで歩いても早妃の許には辿り着かない。
早妃の気配は近くに感じられるのに、肝心の早妃は姿さえ見えなかった。あまりにもどかしくて、早妃に逢いたくて、夢中で手足を動かして先へ進もうとするのに、幾ら歩いても周囲の景色は変わらず、自分が進んでいるのか後退しているのさえ定かではなくなってくる。
そして、夢はいつも唐突に途切れた。
目覚めた自分の頬はいつも冷たい涙で濡れていた。