喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第2章 ♣海の女神♣
「止めろと言ってるだろうが。そんなことをされては、わしが困る」
現に、周囲の漁師たちが興味津々といった顔で悠理と網元を眺めている。
「済みませんッ」
悠理は怒鳴り声のような大きな声で返し、またぺこりと頭を下げた。
網元の憮然とした顔に、一瞬だけ苦笑がよぎったような気がしたのは気のせいだろうか。
「今度、同じヘマをしたら、許さんからな、二度目はないと思え」
網元は相変わらず悠理の方を見ないで、そっぽを向いている。
「はいっ」
悠理は一礼すると、勢いよく引き返した。
競り市場を出ようとしたまさにそのときである。
向こうから狭い道を若い女が歩いてきた。二十代後半といったところか。色の白い、細面の容貌は美人といって遜色はないけれど、どこか淋しげな印象を与える。
女は悠理には気を払うこともなく、通り過ぎていった。ふと気になって振り向くと、彼女は市場に入り、真っすぐ網元に向かっている。
網元の家族なのか? そう考えた途端、何故か胸が轟いた。
「いやあね、お父さんったら」
儚げな外見に似合わず、華やかな笑い声が響き渡り、悠理はその場に釘付けになった。思わず女の方を見つめてしまう。一瞬、視線と視線が空間で交わった。
女もまた息を呑んで、悠理を見つめていた。
二人に気づいたのかどうか、網元が小さな咳払いをし、悠理は慌てて我に返った。
耳許まで紅くなりながら、彼は慌ててその場を離れた。ホスト時代は数え切れないほどの女たちと次々と関係を持った。金のためであれば、相手になど関わりなく、女を抱いた。
そんな自分がまるで小学生のように見も知らぬ女と眼を合わせただけで、頬を上気させてしまうとは。
現に、周囲の漁師たちが興味津々といった顔で悠理と網元を眺めている。
「済みませんッ」
悠理は怒鳴り声のような大きな声で返し、またぺこりと頭を下げた。
網元の憮然とした顔に、一瞬だけ苦笑がよぎったような気がしたのは気のせいだろうか。
「今度、同じヘマをしたら、許さんからな、二度目はないと思え」
網元は相変わらず悠理の方を見ないで、そっぽを向いている。
「はいっ」
悠理は一礼すると、勢いよく引き返した。
競り市場を出ようとしたまさにそのときである。
向こうから狭い道を若い女が歩いてきた。二十代後半といったところか。色の白い、細面の容貌は美人といって遜色はないけれど、どこか淋しげな印象を与える。
女は悠理には気を払うこともなく、通り過ぎていった。ふと気になって振り向くと、彼女は市場に入り、真っすぐ網元に向かっている。
網元の家族なのか? そう考えた途端、何故か胸が轟いた。
「いやあね、お父さんったら」
儚げな外見に似合わず、華やかな笑い声が響き渡り、悠理はその場に釘付けになった。思わず女の方を見つめてしまう。一瞬、視線と視線が空間で交わった。
女もまた息を呑んで、悠理を見つめていた。
二人に気づいたのかどうか、網元が小さな咳払いをし、悠理は慌てて我に返った。
耳許まで紅くなりながら、彼は慌ててその場を離れた。ホスト時代は数え切れないほどの女たちと次々と関係を持った。金のためであれば、相手になど関わりなく、女を抱いた。
そんな自分がまるで小学生のように見も知らぬ女と眼を合わせただけで、頬を上気させてしまうとは。